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キングスマンのhilockのレビュー・感想・評価

キングスマン(2015年製作の映画)
4.5
本年の年末に007の最新作を公開するのだが、監督のマシュー・ボーン自ら007監督を直談判したが断られ、その腹いせに作った映画が本作。そのため、憎しみとまでは言いすぎだが、本家の内容をからかうものが多い。特にボンドお得意の『ウオッカベースのスティアシェイク』を『ジンベースのベルモットは入れず、ボトルを10秒間、かすめ見ながらステア』と、あえて「降るなよ!!」と本家を小馬鹿にしたセリフも行き過ぎを超え、かっこよささえ浮び出てくる。
また、コメディ調でもあり幾分の悪質さも感じるが、これは昨今のダニエル・クレイブ版への反意、過去作品(コネリー版、ムーア版)へのオマージュではないかと考える。悪にも正論があるという2000年代に多かった、見ているものがジャッジを下す倫理観のバランス思考は現代にはマッチしているが、よりグレイな部分をひめている。そのグレイを明確にすることが夢物語の世界では正論ではない。ただ単に犯罪の正論を問うのではなく、そこにはチンケな理由が存在するのではないかという人間の不可思議な構造を改めて見直す作品になった。また、最近の007でめっきり少なくなった秘密兵器の数々を封印してしまった理由も、日常から非日常という映画の中の世界観をより現実化させてしまった功罪も説いているように思われる。
故に、シリアスなボンド映画を王道というなかれ、とあざけり笑う姿さえも垣間見える。イギリス紳士がボンドであれば紳士御用達の三種の神器には大きな理由があるというぶったまげた構想設定や、紳士でありながら実は粗暴であるというジェントルマン気質の偽りを露呈させる。それだけでも楽しめる作品である。この年老いたスパイ役を、コリン・ファースが演じる。過去の作品とのギャップが大きすぎて、私自身見ながら戸惑ってしまったが、制作指揮に廻りながらも好演している姿はなんとも素晴らしい。対峙させる構成にもってこいの悪役をサミュエル・L・ジャクソンがぶっ飛んだ演技をしこれまた最高である。往年のスパイ映画を彷彿とさせるマイエル・ケイン、久々のマーク・ハミルなどの好演もひかる。共演は、タロン・エガートン、マーク・ストロング、ソフィア・ブテラ、ソフィークックソン。続編決定とのこと。コリン・ファースの復活を望む
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