けーはち

見知らぬ医師のけーはちのレビュー・感想・評価

見知らぬ医師(2013年製作の映画)
3.3
人体実験を繰り返し「死の天使」と呼ばれた、ナチス将校ヨーゼフ・メンゲレ。彼が正体を隠してアルゼンチン人の一家と暮らしていたという実話を基に描いたサイコ・サスペンス。

★マッド・ドクター

20世紀最強の絶対悪のスーパーヴィランとも言えるアドルフ・ヒトラー率いるナチス・ドイツ卐の中でも狂った個性をひときわ放つSS将校にして医師💉💊ヨーゼフ・メンゲレ。彼はアウシュヴィッツに勤め、囚人を被験体として扱う人体実験を数多くこなし、中でも双子を縫い合わせて人工的に結合双生児(シャム双生児)を作るという『ムカデ人間』を地で行く無茶をやった人で、またクラシック音楽を愛好し、名曲🎵を口ずさみつつユダヤ人をテキパキ選別し人体実験する姿についたアダ名がTodesengel(Angel of Death)──死の天使💀👼というもの。

何かもうイカれた科学者のテンプレみたいな存在で、そんな人が実在したのが、ちょっとカッコ良いと思ってしまうくらいなのが困る……😔

そんな彼は敗戦の難を逃れ南米に逃亡。モサドのナチ・ハンターに追い回されるも、結局捕まることなく1979年まで生きてブラジルで海水浴中に心臓発作で水死。何の罪でも裁かれることのない生涯だった。

本作はそんな彼のアルゼンチンでの一幕を、事実をベースに描いた映画。とある発育不全の娘に興味を持った彼が民宿を営むその家族に接近し、彼女の母親の産んだ双子ともども密かに実験動物として扱う。やたらと風光明媚な景勝地で行われる、陰惨な行為。

映画の描写自体は淡々と、過剰にマッドな描き方は避けているし、単純に行為だけで言えばアウシュヴィッツでやったことの方がよほど陰惨。ただ、発育障害を抱える娘に施した医療行為そのものは善行で、それに望みを寄せる母と娘の姿を見ながらも、最終的には──善悪の概念がすっ飛んだところにいる、得体の知れない存在というのが、見どころだろうか。