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ヘイトフル・エイトのtntnのレビュー・感想・評価

ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)
4.6
シビれた!タランティーノが、また一皮剥けた作品になってると思います(一回目に剥けたのは多分ジャッキーブラウン)。
前半、非常にゆっくりとしたテンポで話が進みます。
冗長とも取れなくもないし、猛吹雪に見舞われた荒野が何度も映るので退屈する人もいるでしょう。
でも、これはタランティーノなりの映画的贅沢なのです!
「大丈夫。もうここから伏線張ってるから」とタランティーノに囁かれているかのよう。
お得意の会話劇も、後半、真相が明かされるにつれてどんどん伏線回収されるのでまた観たくなる。

さらに人物の掘り込みもこれまでとは段違い。
単に、素性が明かされるだけでなく性格や言動もひっくり返り、さっきまで脇役だった人がもう大活躍してるという非常によくできた脚本でした。

テーマも、イングロやジャンゴみたいな「差別ダメ絶対」的なある種の勧善懲悪(もちろんそれを、ちゃんと描いて、負の歴史に映画的落とし前をつけたことはまぎれもない功績ですが)からさらに進化して、この世界の醜い側面、そしてそれらが裁かれることなく横行しているという事実をこれでもかと見せてくれます。
いくら言っても所詮は人殺し。
へまをすれば尊厳もへったくれもなく血と肉を撒き散らして死んでいく。それだけ。


そして最後に最後に見せるちょっとした希望。あいつとあいつに芽生えた微かな友情(と言っていいのか?)のようなものを感じると、結構グッときます。

ということで、タランティーノの新たな最高傑作誕生したのではないでしょうか。
これを劇場の大画面(日本にはタランティーノが望む大きさのものはもうないようですが)で観れる日を楽しみにしてます。
確かに、R18上等のオトナなバイオレンス密室劇でした!
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