ピト

忘れないと誓ったぼくがいたのピトのレビュー・感想・評価

1.9
他人の記憶から一切の存在を消されてしまう謎の現象に陥った女の子と、なぜか彼女の事を認識できる男の子の話。

記憶喪失の逆版で、自分は覚えてるが周りのみんなは全員自分の事を忘れていく。友人はおろか親でさえも。
新たに出会っても数時間後にはみんな彼女の事をキレイさっぱり忘れてしまう。


誰かに忘れられるのは、その人の世界には存在しなくなる事。
もし世界中の人間に忘れられたら、この世に存在しないと一緒で、それはもう死と同列でしょ。

「人はいつ死ぬと思う?忘れられた時さ」
って、かの尾田栄一郎先生もワンピースで言ってたよ…


生きながら他者に殺され続ける事ほど、残酷な罰がこの世にあるだろうか?

あまりに彼女が背負う十字架がデカ過ぎて、絶望以外の言葉が見当たらないし、エンドロールの先に浮かぶのは死の一文字のみで、そこに希望や救済の文字は一切見当たらない。

だいたい父親もあんな事になってあの子これからどうやって生きてくのよ。

ここまで重い十字架を背負わされた彼女の罪とはなんなのか?
それさえ教えてもらえず祈る事も悔い改める事もできない生き地獄の様な設定。

はっきり言ってダンサーインザダークの100倍胸クソ悪いです。


"切なくて泣ける"とか"感動のストーリー"とか
甘っちょろい言葉の為だけに附された設定に
本当に腹が立つし、作り手の無自覚に恐怖すら覚えます。
彼女の絶望が、ただただ無自覚に無視され続けるのが本当に胸クソ悪くて吐き気がする。

ありえない設定だって全然いいよ、だって映画だし。
でも自分が作ったキャラクターには愛情と責任は持って欲しい。

私が難病モノが大キライなのも多分同じ理由で、泣かせるだけの為に余命を設定され幸せそうに死んでいく、残された者たちの哀しみと再生を描く為の記号の様な難病キャラを見ると、憤りや憐れみは感じれど感動を覚えたことは一度もないです。
人の死を売り物にしながら死を軽く扱う作り手の罪深さ。

この映画にも同じモノを感じました。
キライな映画です。
ピト

ピト