ぽち

レディ・ソルジャーのぽちのレビュー・感想・評価

レディ・ソルジャー(2014年製作の映画)
1.5
2012年ごろから盛り上がった収容所の閉鎖を求めるデモや、収容者のハンガーストライキが大きく報じられたことをうけ、問題を取り上げた作品なので、当時は注目を集めたようだが、今見ると薄っぺらい内容が気になってしまう。

当時の風潮である「無関係な人を人種だけで捕らえている」という大衆の見解をそのまま設定に取り入れているのが軽薄に見える。

また、これについては作中でアリが本当に無罪なのかをはっきり描いていないのもマイナス。
捻った見方をすれば、筋金入りのテロリストで、そのためには何十年でも善人を演じられるともとれる。

そしてストーリーの中心に来る2人の交流がどうにも引っかかる。
特にエイミーの行動は視聴者に「人権を重視する純粋な女性」と見せようとしているのだが、軍隊という組織から見れば0点の兵士。

いやそれ以下かもしれない。
すきあらば逃げ出し、それがダメならなるべく多くの兵士を道連れに自殺。などと考えているかもしれない人間と親しくなり、笑顔で会話をしてスキを見せ、そのキャンプの全兵士を危険にさらしているわけだ。

私には物事の本質を見ることが出来ず、感情だけで行動してしまう愚かな女性にしか見えなかった。

大前提に「収容者は無実」という事があるわけだが、その後のグアンタナモ収容キャンプの資料などを見ると、解放された17%か確実にテロ活動に戻ったそうで、確認できなかった者を入れればもっと数字は上がるだろう。
無実の者もいたのは確かだが、誰が無実か分からなければ政府としては全員を拘束する以外に方法が無かったのは理解できる。

ちなみに現在収容者は37人だそうだ。

映画が公開されてからの8年間でだいぶ今作の見方も変わったのではないだろうか。
映画解説にあるように、ストレートに「二人の心の交流」などと甘い見方をしているようでは、8年間で何も教訓を得なかったってことだな。



余談。
確かに9.11からのアメリカの政策、対応は褒められたものではない。すべてを考慮することなど一個人には無理なのだろうが、せめて今作が取り上げているキャンプX-RAYに関してみれば、個人的には「疑わしきは拘束」というのも理解はできるし、最善の方法ではないが、それによりその後のテロを防いだのも事実。

よく人権問題にすり替えて、アメリカを非難する人を見る。確かにガキ大将アメリカってやり方ではあるが、だったら他にどんな方法があったのか聞いてみたい。

ただし、もっと先に世界が認識するべきは、なぜテロが起きているのか?だろう。
結局、純粋な正義はどこにも無いってことだし、まったく同じ理由で純粋な悪も無いってことだな。
ぽち

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