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レディ・ソルジャーのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

レディ・ソルジャー(2014年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

グアンタナモ収容所に配属された女性兵士の話。

収容されている拘留者達は、常に攻撃的でピリピリとしている。
それもそのはずで、彼らは囚人でもなければ、捕虜でもないのだから。
アメリカ側が強引に拘留しているに過ぎず、中には本当に無実の人間もいるのだろう。
そんな状態で何年間も監禁され続けるわけだから、精神に異常を来す人間が現れても不思議ではない。

そして、ピリピリしているのは、彼らを監視する兵士達も同じだ。
暴れる拘留者に対応し、自殺防止の為に常に監視し続け、外に娯楽があるわけでもない。
終始、緊張感に包まれている収容所の空気は、息が詰まる様だった。

面白いのは、「収容所という環境に閉じ込められている」という意味において、実は兵士も拘留者も同じ存在という事だろう。
むしろ、上官の命令を聞くしか出来ない兵士の方が閉塞的で、気に入らない奴にはクソ爆弾を投げつける拘留者の方が自由な様にも見える。
「本当に拘留されているのはどっちなのか?」…そんな支配関係の転倒がスリリングであり、自由意志についても考えさせられた。

映画の中盤以降は、主人公である女性兵士と拘留者である男性との交流が軸になり、彼らの友情が主に描かれていく。
グアンタナモ収容所に一石を投じるでもなく、哲学的な問い掛けをするでもなく、ありきたりな美談として回収するのは如何なものだろう?
ハリー・ポッターの寄贈でアメリカの罪が許されるわけではないし、グアンタナモ収容所というテーマですら感動コンテンツとして消費する事には、ある種の傲慢さすら感じる。
そもそもグアンタナモ収容所と2人の友情物語に、一体何の関係があるというのか?
看守と囚人の友情を描くのなら、別にグアンタナモ収容所である必要もないはずだ。

やはりアメリカ映画でグアンタナモ収容所を批判的に描く事は難しかったのだろうか…。
最後の最後で腰が引けてしまったのは残念だが、それでも「グアンタナモ収容所がどういう場所なのか?」という事を知るには最適な作品である事は間違いないだろう。
ちなみに、虐待写真が流出したのはアブグレイブ刑務所なので、お間違いのない様に。
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