アリ

イラク チグリスに浮かぶ平和のアリのレビュー・感想・評価

4.8
イラクで出会ったひとつの家族が失われていく姿を通して、イラクが「中東のなんか怖い国」などではなく、私達と変わらない生身の身体が踏みにじられる現場であることを描いています。

綿井監督自身の戸惑いや居心地の悪さが織り込まれていて、「可哀想な国の出来事を平和な日本につきつける」みたいな姿勢とは違った生々しい痛みのある映画でした。

一応まだ戦争をしないという建前があるはずの国、日本はイラク戦争を支持し自衛隊を派遣までしながら、今に至るまでそのことへの反省の入口にも立っていません。
遠い国をうつす映画は、今たまたま戦場ではないだけのこの国の隠された(明らかになりつつある?)側面も映し出すものです。

公開時に一度見ただけですが、ヒューマンドキュメンタリー映画祭で「ゆきゆきて、神軍」「ひめゆり」「鳥の道を越えて」と並んでの上映があり、今回は見返せなかったもののその組み合わせの妙を記録するために書きました。
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