うにたべたい

三里塚に生きるのうにたべたいのレビュー・感想・評価

三里塚に生きる(2014年製作の映画)
4.0
日本の空の玄関口として一日450回以上もの便を発着している成田空港。
本作は、その成田空港建設時に発生した、建設地区である三里塚の住民たちによる反対運動、通称・三里塚闘争のドキュメンタリー映画です。

三里塚闘争は今なお継続している問題です。
成田空港を地図で見ると、成田空港の中と思われる場所に空港施設ではない建物や神社が見えます。
成田空港周辺には三里塚闘争で舞台となった東峰神社や団結小屋が多く現存していて、一応、行くことが可能です。
ただ、闘争の舞台であり、面白半分に立ち入る場所ではなく、また、上空すぐ近くに飛行機が飛んでいるため、安全確保のため空港関係者が見ています。
私は、まずはそういった場所があることを知り、その歴史が知りたくて本作に辿り着き、今回、視聴してみました。

公開は2014年、闘争が始まったのが1966年。
当時を知る人物たちのインタビューに当時の映像、実際の場所を重ね合わせ、何があったのかを伝える形式になっています。
三里塚は第二次世界大戦直後に本格的に開拓が始まっており、歴史としてはそれほど長くないです。
ただ、そこに住む住民は、畑を耕し、川を生活用水にして、助け合って生きてきました。
そこへ空港を建設する計画が、住民に相談無く一方的に閣議決定され、住民達は新空港建設のため協力という名の立ち退きを要請されます。
お金をもらっても、せっかく開墾した土地を手放し、また一から始めることは現実的に不可能であるため、住民らは当然、反対運動を起こします。
(電気やガスの敷設も十分でない当時においては、お金をもらって引っ越せば良いという話ではないため)
反対運動は激化し、闘争に発展します。

政府へのデモ行動、ゲバルト棒、バリケード、機動隊との衝突がリアルに描かれています。
当日を生きた人の生の声が収録されていて、固唾を呑みながら視聴しました。
強制執行の様子や、話だけ知っていた東峰十字路事件の様子が語られていて、あの闘争を知るいい教材と思います。
特に、ある青年行動隊員の自死について、彼を知る人物が涙ながらに語っていたシーンが印象的でした。
非常に勉強になる作品です。

ただ、空港反対同盟はその中でもいくつかの派閥に分かれていて、本作でインタビューに答えているのは熱田派または旧熱田派が主だそうです。
熱田派は反対同盟の中でも、政府と対話を設け、平和的解決を模索したグループなので、事実を移してはいますが、偏りがある可能性があります。
マルクス主義者や共産党員、社会主義者等の活動家、その支援者など、他の視点での反対者インタビューは、次回作の"三里塚のイカロス"で取り上げられているようなので、そちらも是非、見る機会を持ちたいと思っています。