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ジェイソン・ベッカー Not Dead Yet 不死身の天才ギタリストのyoshikiのレビュー・感想・評価

4.2
人の命の有限性が強調される中、その生き様を見せつけられると、まず出てくるのは凄いという感想のみ。言い表すのが難しいが、なんとか表現すると以下のようになる。

すぐ死んでもおかしくない難病ALSを20年近く前に宣告されたジェイソンが今も生きていて、かつ作曲をしていることの凄まじさ、生きようとする意思の素晴らしさに驚く。
若き天才は人に夢を与えたけど、難病に犯された今も生き続けることで、人に夢を与え続けている。その姿から学ぶべきは、その瞬間を懸命に生きることの尊さ。
「僕はときどき病気じゃないかもと感じるときがある」と言うとおり、不自由に見えて彼はその実、とても自由を感じてすらいるのではないかと思えるほど、前向きで楽しそうに生きている。
「みんなの助けがあるから、僕は生きていける」と言っていたけど、彼が周りに夢を与え続けているから、それがさらに大きくなって返ってきているように思えた。パートナーシップは終わっても介護し続ける女性との関係性などはまさに。それはとても良いコミュニケーションのサイクルだと思う。

彼が制限のある中生き続けることの凄さが強調されてしまいがちだが、有限の生ということを拡張して考えると健常な人だろうといつかは死ぬわけで、その命は有限なのだから、やはり人が生きていることそれ自体が奇跡とも考えられる。無駄な命なんてないは綺麗事ではなく、だからこそ自分でその命を無駄にすることなく善く生きる(悪いことをせず、自堕落せず生きる)ことが大切なのだと感じた。「座っていることしかできなくても、やることはたくさんある」という言葉には見習うことは多い。

中々刺さったのは、シネマカリテの館内に貼ってあった宣伝での一文。「氷水をかぶらなくても、こいつを感じることで、やれることがいっぱいある!」
ALS患者はアイスバケツチャレンジよりもジェイソンを見ることで希望を持てるのではないかと思っている。

2014.11.19@新宿シネマカリテ
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