けー

ライド・アロング 相棒見習いのけーのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

アイス・キューブがなんだか可愛いく見えてきた。

ゲームオタクなベンは大学の警備員をしながらポリス・アカデミー入学試験の結果待ちをしていた。

ベンは恋人のアンジェラと結婚を前提に同居していたが、前回アンジェラの兄のジェイムズに招かれたバーベキュー・パーティでジェイムズを火傷させてしまった一件からアンジェラのためにもどうにか心象をよくしたいときっかけを探していた。

そんな時、アカデミーからの合格通知が届き、ジェイムズにアンジェラにふさわしい男であると証明する機会が欲しいと直談判。

ジェイムズは1日一緒にパトロールにまわって証明してみせろといい、ベンは大喜びでその条件をのむが。

ジェイムズを演じていたのがアイス・キューブ。

アイス・キューブが刑事役というところで「すごい!アイス・キューブが刑事役だ!!!」ともうなんだかすごく物珍しいものを目撃しているような気がして。

アイス・キューブが画面に登場した瞬間からこみあげてくる自分でもわけのわからない物珍しさ感。

もうなんだ刑事として行動するたびに皮肉がききまくっている感じがしていちいち笑い転げてしまった。

ベン役のケヴィン・ハートは相変わらずの弾丸トーク。

相変わらずのペースなんだけど、そこに飲み込まれないアイス・キューブの安定感というか不動ぶりが妙な面白さを醸し出していて。



ラッパーといえばやっぱりタフだったり元ギャングだったりと、なんというか喧嘩上等なイメージがあるし、ストリートで起こるさまざまなことをくぐり抜けてきたからこそのリアルな肝っ玉みたいなものがそなわっているところがあって。
だからこそ警察や体制のプレッシャーに恐れることなく物申す姿勢を貫けると思うのだけれど、それを「すげー」と思う一方で、どうしたって喧嘩に強くなかったり、喧嘩が好きじゃなかったり、君らが騒ぎを起こしたことでとばっちりを受けた存在もいたはずで、Hip-Hopの歴史やらカルチャーやらを学んでいくうちにそのことが気になりだしまして。

まぁ私自身がオタクだから余計感じたのかもしれませんがなんというかアスリート系やアウトドア派に負い目感じつところがありまして、あのゾーンからくる”爽やかリア充オーラ”がどうにも苦手なんですよ(←ええ、ええ、単純に僻み根性です。自覚ありますとも)。

で、この映画ではベンがタフな世界でオタクの意地を炸裂させてみせてくれたところがちょっとスカッとしたというか。

いちいちバカバカしかったり他愛なかったりするんですけれど、ものごとが興味ゾーンにはいるとどんな状況下でも妙に度胸がいいというか恐れ知らずになるのがオタクという種族の特質だと思うのですが、ベンもまさにそういう感じで。

最初はジェイムズにうっとおしがられたり、煙たがられたりするんですけど、

一緒に過ごしていくうちにジェイムズが自分の先入観からベンという人物の本質を見ようとしていなかったと自分に気がつく場面があって、こういうのはこういうストーリーでは定番シーンではあるけれども自分の間違いや思い込みをきちんと認められるってことはすごく大事なことだなぁって改めて思って。ジェイムズかっこいいゾっ!と。

この人はどういう人なんだろう」というのはやっぱり文脈を読み取るようにしばらく観察してみないとわからない。

私は早とちり名人だし、思い込みも激しいので、ついつい敬遠しがちになるのだけれども、最近はなるべく自分の中で「苦手だ...」と感じた時はなぜそう思うのかという理由をつきとめるようにつとめているんです。まぁちょっとだけですが。

で、結局、そういう激しい拒絶感がでる時って、自分のコンプレックスやら罪悪感的なものにつながっている場合が多いんだなぁということが見えてきて、で、余計に落ち込んだり。

でもまぁね。しょうがないやね。そういう自分と生きてかなきゃいけないのは結局自分ですから、同じ罠にひっかからないよう今後気をつけようと思うしかないというか、同じイラっがきても「ああ、また私のあの罪悪感だ」とか「コンプレックスきたー」とオチをつけることができるので、オチがつけば意外にもやもやしなくていいんだとこれまた最近悟りまして。うん。

話がそれました。



他愛無くてお約束ごと満載で、お約束通りに丸く収まってくれるのが嬉しい感じで。

予定調和というか、こういうのが好きなのって物心ついたときから吉本の芸風に浸っているせいなんでしょうか。お約束ごと通りに丸く収まってくれると「いいものをみた!」って気になって満足してしまいます。

ジェイムズは幼い頃から妹と二人きりでフォスターホームを転々としたせいで自分しか信じられなくなって、”人に頼る”という概念がそもそもない感じの人なんですが、ベンのしつこさについに懐柔されるというか、全然心を開いてくれなかったニャンコがついに信用する気になって、ちょっと面倒くさそうに尻尾でリアクションとるっぽい感じのアイス・キューがとんでもなくかわいいく見えてきてしまったのです。

アイス・キューブという人はなんだかとってもピュアな心根の人なんだなぁと好感度が劇的にアップです。

最近BLM関連のインタビューなどを読む機会が増えて、つくづく頭のいい人だなぁと思うと同時にこの人のいうことは信頼できるなぁというか勉強になるというか。なんというか一理は確実にあるところがすっげぇかっこいいと。

撮影中、ケヴィン・ハートがアイス・キューブを笑かそうとアドリブやら何やら過剰にしかけてきたそうですが、ついに一度もアイス・キューブを吹き出させることに成功しなかったとか。  

ここにきてようやくアイス・キューブの可愛らしさというか、多くの人を惹きつけてやまない人柄が見えてきたような気がして嬉しくなりました。
けー

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