かたゆき

マッド・ガンズのかたゆきのレビュー・感想・評価

マッド・ガンズ(2014年製作の映画)
2.5
僕は緑の大地を見たことがない――。
世界的な環境破壊と異常気象により、大干魃に見舞われた近未来。
何処までも拡がる砂漠の真ん中で、いつか緑の大地が戻ってくることを信じて暮らしているホルム一家。
家族の長である寡黙な父親アーネストは、僅かに湧き上がる井戸水を頼りに少量の農作物を育てて生きていた。
美しく成長した長女のメアリーは、そんな頑固な父親に反発しながらも家事全般を担当している。
まだ思春期を迎えたばかりの末っ子ジェロームは、過酷な世界に絶望を感じながらそれでも必死に生きていこうと父親の手伝いをしている。
彼らの母親は、過去のとある出来事が原因で家から離れた病院で長い入院生活を余儀なくされている。
滅びゆく世界で希望を捨てずに生きてゆこうとするそんなホルム一家だったが、メアリーの彼氏である荒くれ者のフレムという男がやって来たことで深い亀裂が入っていくのだった……。
荒れ果てた近未来を舞台に、親子二代に渡るとある家族の物語を乾いたタッチで描いたバイオレンス・ドラマ。

正直言って、舞台設定は凡庸という他ない。
『マッドマックス』が製作されて以来、これまで幾百も創られてきた終末世界を舞台にしたアクション映画を踏襲しただけで、新しい部分は一切ないと言っていい。
そこで繰り広げられる物語も、よくある親子の葛藤&復讐劇で大して面白いものではない。
見所は、そんな平凡な家族のドラマを終末世界というミスマッチな舞台で非常に丁寧に創り込んでいるところだろうか。
家族を演じたそれぞれの役者陣のナチュラルな演技も見応えがあり、特に絶望的な世界でそれでも愛する男の子供を産もうとする長女メアリーを演じたエル・ファニングの可憐さはとても印象深いものがあった。
ストーリーの重要な鍵となる荷物運搬用ロボットの造形も見ているうちに愛着が湧いてくるから不思議なものだ。
と、そこらへんは素直に面白かったと言っていいだろう。

問題は、先に述べたように舞台設定に一切新しい部分がなく、ずっと砂漠の映像ばかりが続くために途中で飽きてしまうところだ。
もう少しこの作品ならではという新しい部分で勝負してほしかった。
時折、はっと目を見張るほどいいシーンがあっただけに残念というほかない。
かたゆき

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