うめ

スケルトン・ツインズ 幸せな人生のはじめ方のうめのレビュー・感想・評価

3.5
 ほぼ同時期に、アメリカの長寿コメディ番組サタデー・ナイト・ライブに出演していたビル・ヘイダーとクリステン・ウィグが二卵性双生児の双子を演じたコメディ。コメディとは言え、笑えるところはそれほどなく、どちらかと言うとヒューマンドラマと捉えるべき作品。

 結婚しニューヨークに住む姉マギーとロサンゼルスで俳優を目指すゲイの弟マイロ。二人は人生に絶望し、同日に自殺を図っていた。そんな二人が10年ぶりに再会し、マギーの家で共に暮らしていく中で、それぞれがそれぞれの人生と向き合う姿をコミカルに描く。

 ちょっとどうでもいい話だが…私は「後悔するな」という言葉があまり好きじゃない。だって、どんな事でも少なからず後悔するでしょう?と。私は行動に移す前に、行動パターンを何種類も考えてしまうような人間だし、どんなに頑張っても隣の芝生は青く見えてしまうものだし…後悔しないなんてほぼ無理で。だから、それよりも大切なのは、その後悔した行動を、後悔した後に自分で受け入れられるかどうかってところだと思う。その部分が今でも大事だと思っている。

 今作もそうで、劇中に登場する金魚みたく、すいすいっと水の中を泳げたら、それはそれは楽なんだろうけど、実際、マギーとマイロは後悔という名の重りに足を引っ張られ沈み気味。うまくいかない人生、なんで?が付きまとう。でも肝心なのは、その人生を受け入れられるかどうか。それができるのは、きっとマギーにマイロが、マイロにマギーがいるように、自分を見てくれている人がいるから。沈みそうになっても、誰かの手を取って不器用ながら泳ぐこと、これが人生なんだろうなぁ。(って、若輩者の私が言うのもおこがましいですが(笑))

 で、マギーとマイロの関係の描き方が良かった。10年間疎遠で再会後、最初はぎこちなかった雰囲気も、ちょっとした瞬間にほどける感じ。私にも姉がいるのでなんとなくわかります。二人でふざけ合って笑うシーンはちょっと照れくさかったり、むず痒かったりしたけれど、温かでほっとした気持ちになれるシーンだった。

 またこの双子の雰囲気をビル・ヘイダーとクリステン・ウィグがよく出していて。コミカルで軽くなり過ぎず、でも重くなり過ぎずっていうバランスを全体的によく表現していたと思う。特にマイロが、落ち込むマギーのために音楽に合わせて口パクで踊るシーンは、サタデー・ナイト・ライブで培われてきたであろうビル・ヘイダーのコミカルな演技が光っていて良かった。

 こういう作品、結構好きなんだなぁと感じた。設定はありきたりで展開も地味なんだけれど、全体的に温かな人間ドラマ。だって、よくよく考えたら実際の人生もこういう感じですもんね。小さな喜怒哀楽を積み重ねて生きている訳だから、地味でも共感できる部分があって、ぐっと来ちゃうんだろうなぁ〜。上映時間も短いですし、ちょっと息抜きにいかがでしょう?
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