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奇跡の2000マイルのfujisanのレビュー・感想・評価

奇跡の2000マイル(2013年製作の映画)
3.6
強い女性の冒險物語でした。

少し前に観ていた映画でしたが、ちょうど先日のドラマ「VIVANT」でラクダで砂漠を横断するシーンがあったのと、最近の暑さは他人事じゃないと思ったので、このタイミングでレビューを書いておきます。

この物語は、27歳で灼熱のオーストラリア砂漠を単独横断した女性の冒険記 『Tracks』 を映画化した、実話に基づく物語です。




■ 映画について

・オーストラリアを代表する撮影監督マンディ・ウォーカーが物語に登場する現地の砂漠で撮影。

・砂漠を横断したロビン・デヴィッドソン役をオーストラリアの女優ミア・ワシコウスカ(アリス・イン・ワンダーランド主演)が熱演。

・映画には若いアダム・ドライバーが雑誌カメラマン役で共演し、クセが強いキャラクターで印象を残していました😅

・監督のインタビューによると、砂漠の危険な熱さにより撮影も困難を極めたようです。主演女優のミアの日焼けもすごく、よくこの役を受けたなぁと思いました。


■ 感想・考察

良い評価と悪い評価が極端に分かれてるのは、旅の動機が分かりにくいからかなと思いました。命の危険がある旅にも関わらず動機がはっきりしないので、感情移入が難しい面はあるかと。

一方で、ロードムービー的な旅物語が好きな方にとっては、オーストラリアの雄大な自然もあいまって、たまらない作品なのでは、と思います。

とにかくこのロビンは強い女性で、当時男性優位の時代の中で、この冒険記がベストセラーになったのも頷けます。

映画では途中、アダム・ドライバー演じるカメラマンと一夜をともにするのですが、その後、急に恋人のように馴れ馴れしく寄ってくる彼を鬱陶しいとクールに拒絶するところなど、なかなか痛快😅

事実ベースの映画ということで、映画は半分ドキュメンタリーのように淡々と進みますが、とにかくオーストラリアの雄大な自然が美しく、自分も一緒に旅をしているような気分が味わえる作品でした。

個人的には、強い女性&雄大な自然ということで、「ノマドランド」に似ているかな、と。ただ、今作も、公開当時はミア・ワシコウスカがアカデミー賞を受賞を噂されたようですが、ノミネートもされなかったようで残念です・・

にしても、オーストラリアは確かに海沿いにしか人は住めないですね。映画でも途中、子ラクダが地面が熱すぎて歩けなくシーンがあったりと、気候が過酷すぎます。

ただ、そんな砂漠にも先住民アボリジニは住んでいたり、白人家族もたまに住んでいたりと、人間って強いなぁと、興味深く観ることができた映画でした(最近の日本の酷暑🌞も異常ですが・・・😥)




映画も興味深かったですが、とにかくこの事実が凄い!ということで、以下にまとめておきます。


■ ロビン・デヴィッドソン

1950年にオーストラリアの牧場で生まれ、自然の中で育つも11歳の時に母が自殺。叔母のもと学校で動物学を学ぶが、卒業後は就職せず無一文でオーストラリア中央にあるアリススプリングスに一人で引っ越す。

数年間ラクダの訓練を学んだ後、1977年、西海岸を目指してラクダ4頭と犬一頭と共に、ギブソン砂漠の単独横断を目指す。砂漠横断後もインドなどを放浪、現在もオーストラリアで作家としてご活躍中。*

映画のエンドロールで本人の当時の写真が流れますが、今作の主演、ミア・ワシコウスカに負けず美人な方で、雰囲気もとても良く似ていました。


■ 砂漠横断の旅

・1977年4月8日にアリス・スプリングスを出発し、195日目の10月19日にインド洋の海岸に到着。

・オーストラリアのちょうど中央にあたる、アリススプリングスから西海岸のインド洋に面したハメリンプールまでの2000マイル(約2700キロ)の旅で、日本でいうと稚内から鹿児島までの距離。*

・オーストラリアは国土の半分近くが砂漠で、日中は40度近くになるが、夜間は一桁台という過酷な気温。西オーストラリアに広がるギブソン砂漠は同国の探検家ギブソンの名前に由来(ギブソンは同砂漠探検中に死亡)

・彼女に同行したのは自身が調教したラクダ3頭と子ラクダ一頭、愛犬一頭のみ。ラクダは調教を習った先の牧場で報酬として譲り受けたもの。ラクダは水を運ばせるために使い、本人は一日約30キロを歩いて進む。

・途中で何度か写真を撮影することを条件に、ナショナル・ジオグラフィック紙より資金提供を受ける(映画ではアダム・ドライバーがカメラマン役)


■ オーストラリアのラクダ🐪

オーストラリアは、世界一のラクダ🐪王国って知りませんでした。

・元々ラクダの居ないオーストラリアに探検隊が移動手段として持ち込んだラクダだが、列車や車の発達により不要になり現地に放置。気候が合ったこと天敵が少なかったことから大繁殖し、今や世界一の頭数となっている(2020年頃には推定で100万頭を超えるらしい・・)

・そのため、中東などからやってきたラクダ使いが野生のラクダを捕らえて調教し、中東などに輸出している。また、繁殖しすぎたラクダが水や食料を求めて人家を襲う被害も増加しており、殺処分を実施するほど

・ラクダは意外に凶暴で、特に発情期のオスは人間でも手がつけられないほど凶暴化する。映画でも、調教師の師匠から、野生のラクダが近づいてきたら、とにかく何も考えずに撃て、と教わるほど(ちなみに調教するラクダは去勢済み)。

ラクダ=中東、のんびりしてるイメージっていうのは自分の思い込みでしたが、こういうのを知れるのも映画のいいところ




2023年 Mark!した映画:207本
うち、4以上を付けたのは25本 → プロフィールに書きました
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