米粉

奇跡の2000マイルの米粉のレビュー・感想・評価

奇跡の2000マイル(2013年製作の映画)
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ロビン・デヴィッドソンという女性が、オーストラリアの砂漠2700キロを9ヶ月かけて横断し、インド洋に出るという過酷な旅をした。
4頭のラクダと愛犬1匹を連れて。
彼女がまとめた旅の記録「TRACKS」が原作になっている。

ロビンがオーストラリアの砂漠の中をひたすら歩き続けるという非常にシンプルな内容だが、連続する息を飲むほどに美しい風景に圧倒される。
幻想的な夕日、木の枝の間から垣間見える月。
ひたすらに美しかった。
ナショナルジオグラフィックチャンネルかと思った。
世界で最も野生のラクダが生息しているのはオーストラリアだなんてことは、この映画を観なければ人生で知り得るチャンスはなかったかもしれない。
そしてとにかく野生のラクダが恐ろしいということも。
発情期の雄ラクダが白い涎をダラダラ垂らしながら地平線の彼方から走ってくるシーンは本当に恐ろしかった。
「男は狼なのよ 気をつけなさい」って歌詞も狼じゃなくてラクダにした方がいい。
映画をきっかけに様々な分野の知識が増えるこの快感は、私が一生映画を観続けたいと思う大きな理由の一つだろう。

そもそも彼女はなぜこの無謀で危険な旅に出たのだろう。
幼い頃の辛い経験が傷となり、大人になった今もなかなか人と打ち解けられない。
そんな彼女だが、道中では現地の人に食べ物を提供してもらったり、ウサギやカンガルーの調理法を教えてもらったりして、人間とのコミュニケーションを経験してゆく。
野生のラクダに襲撃されたり、ラクダが遠くに行ってしまったり、コンパスを失くしたりと様々なアクシデントに見舞われるが、ひとつひとつを乗り越えながら旅は続く。
何だか人生そのものみたいだなと思った。
どうしようもないピンチに陥ったとしても、誰かが助けてくれて、転びながらも前に進むことができる。
挫折を挫折と思わない強い心、そして周囲への感謝の気持ちを忘れなければどこまででも進んでゆけるという強いメッセージを感じ、ラストの彼女の笑顔に思わず涙した。

個人的な話にはなるが、最近イスラエルの軍隊式格闘技を習おうと考えている。
その話をすると皆口を揃えて聞く。「何を目指してるの?」と。
別に何になろうともしていないし、明確な目的があるわけでもない。
自分でも分からない力に突き動かされて、という感じに近い。
(たまたま「ザ・レイド」を観たから、というのがきっかけではあるが。)
何か新しいことを始める時の心持ちは案外そんなもんだったりする。
とにかく動かなければ何も始まらない。
そう思うのは現状に満足していないからという事実に間違いはなく、彼女もきっと何かを変えたくて旅に出たのだろう。
得たものについては結果論でしかない。
自分の心と欲求に忠実に生きることを大切にしている私からすると、彼女の姿は本当に美しく魅力的だった。
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