うめ

ある神父の希望と絶望の7日間のうめのレビュー・感想・評価

3.4
 アイルランドが舞台の作品。一週間後に殺すと予告された神父の日々の様子をブラックユーモアを交えて描くドラマ。主演はハリー・ポッターシリーズのマッド・アイ・ムーディ役を演じたブレンダン・グリーソン。

 どんよりとした曇天のアイルランドの風景が印象的。映像としても、また殺人予告がされているという設定としても暗い雰囲気があるにも拘らず、そこにブラックジョークが挟み込まれ、くすりと笑える要素が含まれているのが面白い。重くなりがちな雰囲気も軽く見やすいものに仕上がっていた。

 ただそうした方法を取ったせいか、ややテーマが曖昧になっていたようにも感じられる。コミカルな場面として笑ってよいのか、深刻な場面、これからの展開に繋がる場面として受け取るべきなのかが判断しづらい部分があった。またそうした部分があったのは、おそらく題材が宗教的なものだからという理由もある。原題の"Calvary"や邦題の7日間、また本編で村の人々の悩みや行いからもわかるように、明らかにキリスト教を題材としており、それをよく理解しないと面白さが感じられない部分があるのではないかと思う。私もキリスト教について知らないことが多いので、はっきりと掴みづらい部分があった。

 だが、ストーリーとしては起承転結がしっかりしているし、何よりラストシーンの神父の娘の表情はとても心に残る。赦しや信仰、神といって本質的なテーマはわからずとも、どこか余韻の残る結末にはなっていると思う。

 その結末まで導いてくれたのが、主演のブレンダン・グリーソン。神父でありながらも、人間味溢れ、苦悩する姿をコミカルに、時にシリアスに演じていた。ちなみに息子は『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』などに出演しているドーナル・グリーソン。今作にも少しだけ出演している。その他、クリス・オダウドやケリー・ライリーといったイギリス俳優が脇を固めているのも見所の一つだろう。

 なかなか理解しにくい部分もあるが、落ち着いた中にも深いテーマを据えた作品。キリスト教をもっと知ってからまたじっくり味わいたい。
 
うめ

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