chunkymonkey

湖の見知らぬ男のchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

湖の見知らぬ男(2013年製作の映画)
3.5
プライド月間、どんどんいって調子に乗り過ぎた... これはちょっと過激な描写系で閲覧注意なやつ。わかってはいたけど、アマプラ追加チャネルお試し期間中に&映画の評価は高いのでまあ大丈夫かなと思ったけれども。いやぁ、けれどもでした(笑)。普通によき作品だとは思いますが。

人里離れた湖のほとり、いわゆるハッテン場が舞台。ショーツを着たり着なかったり、いじったりいじらなかったり、自由気ままな姿をさらすオッサンの集合体で、意図的にホント異様で気味の悪い光景が映し出されています。しかしながら、その一人/一組ずつの姿をみていくと、会話は極めて素朴で微笑ましいほどありふれたものであり、ストーリー上のサスペンス要素以外には行動も特に異常なものは見当たらない。主人公の恋愛模様も"ザ・陳腐"そのものです。

結局彼らの性の姿というのは、異性愛者が自宅やホテル、飲食店、公園など日常の生活の場でみせるであろうその姿と何ら変わりはなく、それを隔絶された極めて閉鎖的な空間・時間に押し込めたことで偏見もトッピングされ集合体として見かけ上不気味な世界が出来上がっているだけである。もちろん彼らを湖のほとりへ追いやったのは私たちの社会に他ならない。つまり「変態の楽園」とレッテルを貼られかねないこの異世界を構築しているのは「彼ら」ではなく「我々」だということ。

例えば他人の行為を見て楽しもうとするオッサンが象徴的で、よく考えるとその行動は我々が自宅でその手の動画を見るのと何ら変わりはない。時代や地域的な背景はよく知らないが、そういったコンテンツが手に入らないとか、自宅では周囲にばれるとまずいとか、いずれにしても何らかの社会的要因が彼をあの場所に連れて来たのは想像に難くなく、彼らは変態でも何でもない。

また、奇妙なストーリーライン・サスペンス要素が暗示的に彼らの不安、迷い、覚悟や諦め、罪の意識、切実さと抑圧などのあらゆる感情を実にうまく表現していて、「ほほーん。」となるんよ。恋は盲目?それとも最後は愛が勝つ?ラストの解釈は観客お任せパターンで観る側の恋愛観が反映されそう。

一方で気になったのはテンポ。劇伴がないだけに(自然の音が実はうるさい田舎あるある)、編集のテンポ・リズム感の悪さが余計に目立ち、間延びしてます感が強かった。あとは、散発的にPOVを忘れたころにひょっと取り入れてくるのがやや違和感あり。

映像は... まあ段々観てると麻痺はしてくる。が、個人的には××動画であっても然るべきロマンチックなシチュエーションでいたしてほしい(TMI... 誰もお前の趣味は聞いとらん。)くらい過激系は苦手なのでこの上映時間が限界、あまり長い映画でなくてよかったというのも正直なところ。というわけで耐性がありそうな方はお試しあれ。
chunkymonkey

chunkymonkey