8さん

名もなき塀の中の王の8さんのレビュー・感想・評価

名もなき塀の中の王(2013年製作の映画)
3.7
生れながら愛を知らず、暴力でしか自分を示せなかった不良少年が、不器用ながらも初めて他人と向き合い、生きる希望を見つけていく姿を描いたドラマ作品。

少年院でトラブル続きだった暴力的な少年エリック・ラブは、成人の刑務所へ移送される。そこでもエリックの乱暴は止む事はなかったが、心療セラピストとの出会いや、同じ刑務所内に収監されていた父親ネビル・ラブとの再会によって、少しずつ変わっていく。

暴力でしか自分を示せず、愛を知らなかった少年が、初めて生きる希望を見つけていくのたったが、これまでの行動を問題視していた勢力が動き始める…


『勝つ事、それが全てだった…』


凶悪で様々な犯罪を犯してきた囚人達は、尊厳を奪われ続けて育ち、剥き出しで傷にまみれた尊厳は血を流し些細な障害にも敏感で、その反動は暴力へと変貌していく。エリックの成長物語という内容だが、刑務所内の描写はとてもリアルで様々なシーンでの音響等も、闇の中で漂っているピリピリとした空気感を感じる事が出来る。

野蛮で横暴な面だけではない。不器用ながらも苦しみもがいて一筋の光を見つけていく姿は、繊細に表現されていてジャック・オコンネルの演技力と幅の広さが伺える。

限られた空間の中で渦巻く小さな世界は、現代社会の荒廃した縮図を描いていて、受け入れ難い面もあるが知っておいて損はない内容である。
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