ちろる

パーソナルソングのちろるのレビュー・感想・評価

パーソナルソング(2014年製作の映画)
3.9
認知症でほぼ、記憶がない老人にヘッドホンをつけて音楽をつける。
しばらくすると、すらすらと自分のことを話し出して、さっきまで答えることのできなかった自分の年齢、子供の年齢、たくさんの思い出をすらすらと語り出す。
やらせのようにあからさまに変わるけど、残念ながらやらせなどではなく本当の出来事。
驚いたのはホームにいる他の老人たちも例に漏れず、次々と頬を色づかせて、色んな思い出を具体的に語り出したこと。

この不思議な魔法、その正体ただシンプルに過去に好きだった音楽を聴かせること。

これに登場した慈善活動家のサマイトは言う。
『人は、音楽を通じて自己表現できるし、それによって再び幸せを取り戻せる。』
と。

私たちは生まれる前からビートを刻み、生まれてすぐに歌い出す。
音楽に合わせて体を動かしてしまうのは、人間にしかない能力だという。

産業革命が繰り返され、いつの間にか介護がビジネスとなり、ホームに詰め込まれた老人たちには抗精神薬が濫用され始める。
感情が次第になくなり、何もできなくなり、患者となるのだが、

月に100ドルもする薬を与え、それらの
薬を拒むこともできないのに、皆内向的になり、思考も停止し、[生きる屍]のようになるのにそれに誰も疑問を持たない。
100ドルの薬を与えるなら40ドルのプレイヤーの方がよっぽど人間らしく生きる力を与えられるのに、政府はそこに予算は与えない。
医療ではないから。

認知症でも、うつ病でも、他の病気でも副作用がなく、自身だけでなく周りが幸せになり、ほんとうにみるみるうちに元気になっていく。

皆幸せになるために生まれてきた。
年齢を重ね、知識を重ねて、老年期の人々は尊敬されなければならない存在なのに、
実際はホームに押し込められてその存在が忘れ去られる。

そうであってはいけない。
そうしないために必要なこと、ヒーリングアニマルや、孫の存在など色々とあるけれど、音楽もまた、彼らを再び世界と繋げていく力があるとはなかなか知られていない。
これはすごい試み、高齢化社会が進む日本でも、認知症の老人たちにこのソングヒーリング試してみるのも悪くない。


あなたのお気に入りの音楽は何?

それは新たな人生への扉。
タイムスリップしたり、失われた心を取り戻すために、さあ、音楽を聴こう。
将来に向けて、年齢刻むごとに音楽を聴けば、自分の将来も何か変わりそうな気がした。

介護の未来を変えていくためにも、多くの人に知って欲しい良作ドキュメンタリーでした。
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