砂利川権兵衛

羽田へ行ってみろ、そこには海賊になったガキどもが今やと出発を待っているの砂利川権兵衛のレビュー・感想・評価

4.1
想像以上に『ションベン・ライダー』なのでビビり散らしてる。というか、めっちゃ相米慎二。なので当然、歌もある。すなわち超サイコウ!

まず、画面のキマリっぷりが只事ではない。ロングショットで女性が歌っていて、そこを自転車が通り過ぎていくシーン。スタンダードサイズの縦長画面の余白を低空飛行で横切るジェット機。あまりに良すぎる。俺は今、猛烈に映画を観てる! という気分にさせられる。レキシくんが太宰を引用しながらモモチャンに傘を差し出す場面も青春映画としてメチャクチャいいショットになっていたし、合流した先生を含めた六人で焚き火を囲んでドンチャン騒ぎするくだりの祝祭的な空気と時間も最高にエモーショナル。

醸成された多幸感をすべて不意にするクライマックスの乱暴極まりない終わらせ展開もどこか哀切で、例え空中分解スレスレの破綻した脚本でも無理矢理納得させられてしまう何かがあった。映画なんだからこの程度の「飛躍」許容範囲でしょ。

ラストのタイトル回収(?)みたいなモモチャンのモノローグも、演出的な作為しか感じない船上の人物配置(ほとんど幾何学模様!)も、この作品を構成するなにもかもが本当に素晴らしい。俺は死ぬまでこういう映画ばかり観ていたい。充実の1時間弱でした。