Dio

博士と彼女のセオリーのDioのレビュー・感想・評価

博士と彼女のセオリー(2014年製作の映画)
3.4
実在する天才の話を目にする度に何故自分もこのように生まれなかったのだろうと思う。
個人的な話で恐縮だけど、僕は地方国立大で理系院生だった。勉強は苦手ではない。たけど研究の道は早々に諦めた、それはやはり他の研究者たちと比べて自分の脳が劣っていると認識せざるを得ないからだ。

この映画を見て僕はコンプレックスを思い出す。
博士のような知能を手に入れることが出来るなら体が動かなくなっても構わない、そう思えるほどの強烈なコンプレックス。

ただ僕はコンプレックスとは行動力の源であり行動は最も重要な能力であるという考えを信仰しているから決して余計なものではない。


余計な前置きが長くなりました。
閑話休題

この映画はホーキンス博士の功績の素晴らしさを伝える映画というわけではなく、ホーキンス博士のあらゆる特異性を主軸に、その周辺を惑星のように、もしくは衛生の如く、寄り添いながら献身的に、そして疲弊していく彼の妻、ジェーンの愛の物語である。
決して全てが上手くいくわけではなかった、愛の物語。

しかし僕は思う。
一人の人への愛には総量が存在し、それは献身的であればあるほど消費されてしまうんだとしたら、博士の出した結論はとても理にかなっていると。
(さらに言えば、人の不得手により消費される愛の量は変動する。例えば介護を生来の資質としない人間には介護を行う上でより多くの愛を消費される。)
つまり二人はお互いを不幸にする前に別れたのだ、多分。
その生き方は誰にも否定出来ないだろうし彼らが残した景色(=子供たち)は間違いなく素晴らしい。


ちなみに個人的にこの映画の最大の見所はその音楽だった。
映画音楽といえば僕はウィル・メルテンやフィリップグラスが好きだけど、この映画のヨハンは彼ら並みに最高だった!
この美しく荘厳であり、深い所まで連れていこうとするリピート性は本当に中毒性がある。サントラどころではなく日本では手に入らなそうなので彼のアルバムを輸入する所存である。

31th Jan 2016
Dio

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