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博士と彼女のセオリーのEyesworthのレビュー・感想・評価

博士と彼女のセオリー(2014年製作の映画)
4.4
【宇宙の始まりと愛のエレガントな証明】

監督ジェームズ・マーシュ、主演エディ・レッドメインで原作はジェーン・ホーキング『無限の宇宙 ホーキング博士と私の旅』を下地にイギリスで作られた2014年のラブロマンス作品。世界的に有名な車椅子の天才理論物理学者スティーブン・ホーキングとその妻ジェーンの恋愛が中心に描かれる。

〈あらすじ〉
1963年、ケンブリッジ大学で理論物理学を研究するスティーブン・ホーキング(エディ・レッドメイン)は、中世史を学ぶジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と出会い、恋に落ちる。その後、一般相対性理論に関わる分野で理論的研究を前進させ、1965年にブラックホールの特異点定理を発表し、世界的に有名になった。しかし順風満帆とはいかず、彼はやがてALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病に発症し、余命2年を宣告されてしまう。余命宣告を受けながらも、ジェーンと結婚し子供も授かる。徐々に身体の自由が奪われていく試練に見舞われながらも自らの生きる意味を考え、家族のために最も望ましいセオリー(理論)を導き出していく。

〈所感〉
スティーブン・ホーキング博士のことは早川書房から邦訳が出版されている『ホーキング 宇宙を語る』を読んで、その壮大な宇宙の物語に感銘を受けたため覚えている。好きすぎて早川書房の入社面接で好きな本としてアピールしたこともあった。(結果は惨敗だが…)
普通の病気は身体が一気にトーンダウンするイメージだが、彼の場合は運動ニューロン疾患で、時間をかけて指先から手、脚、口、やがて全身の筋肉が動かなくなっていく、という恐ろしい過程を自他共に味わっていくことになる。ホーキングのような卓越した頭脳を持ちながらも身体が思い通りに動かせないというのは何とも口惜しい神の悪戯だろう。それでもその境遇に負けず、限られた手段でより一層研究する姿は誰もが見習うべきものだと思った。妻ジェーンに迷惑をかけている意識があり、子供たちとも普通の家庭の父のように接することができない罪悪感を抱えながら、最後に決断した選択は間違いではないと思った。愛があれば何でも乗り越えられる!というのは理想論で、現実はそうドラマチックにはいかない。一緒に過ごす時間が長くても身体の接点が無い愛情には限界がある。そういう意味で彼らの行く末に納得できた。
スティーブンの親友ブライアン、ジェーンの第2のパートナーとなるジョナサン(チャーリー・コックス)、真摯なケアで博士を支えたエレインと周りの人間が皆優しくて恵まれすぎている。そんな周りの人々に支えられている事実を2人は痛いほどわかっていただろう。宇宙の正しい学説と家庭の幸せな学説をどちらも証明しようと奮闘したホーキングの人生はやはり彼のキャラクターもあってユーモラスで微笑ましい。
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