エソラゴト

博士と彼女のセオリーのエソラゴトのレビュー・感想・評価

博士と彼女のセオリー(2014年製作の映画)
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元妻のジェーン・ホーキングの原作による映画化の為、孤高の天才物理学者の側面というよりも妻目線の1人の男性であり夫でもあるホーキング博士の実情を描いている。

その為、お酒や賭け事が好きだったりジョーク好きのお茶目さ等博士の人間味溢れる一面が随所に垣間見ることが出来る。

一見、難病の夫に献身的に仕える妻の奮闘振り…という作風にも見えるが、現実はやはり生易しくはなく子供達の世話や夫の介護疲れ、夫への複雑な感情や思いといった人生の厳しさも同時に包み隠さずきちんと描かれており、よくある普遍的な夫婦円満ラブストーリーとは一線を画す内容になっている点が今作の白眉である。

誰もが認めるエディ・レッドメインのホーキング博士役のなりきり振りは異論の余地無しだが、個人的には妻役のフェリシティ・ジョーンズの繊細な表情がより魅力的に感じた。結婚後のどこか空虚な眼差しも夫の介護や子供達の世話疲れとはまた違う女性としての憂いを感じさせた。

劇中、瞬きで意思の疎通を図る方法は『潜水服は蝶の夢を見る』でも描かれていたが、両作品とも身体的に絶望的な状況ながらも持ち前のユーモアや明るさと生きる為の目的を本人が持ち合わせていること、またそれを支える家族や友人たちというかけがえのない存在があることが、あらゆる困難を乗り越えようとする主人公の原動力になっているように思えた。