オジサン

仮面ライダー1号のオジサンのレビュー・感想・評価

仮面ライダー1号(2016年製作の映画)
4.0
この映画を鑑賞するにあたり、大前提として藤岡弘、氏の人となりに理解があるかどうかも重要だが、理解できるかどうかというのも必要になってくると思います。

藤岡氏の思想は一言で簡潔に現すと素敵なものであり、それを表現するとなるとおそらく氏ですら難しいのではないかと私は勝手にですが思っていて、
要するに人間とは何か?
人間とはどうあるべきか?
愛とは何なのか?
その愛はどこにありどうすれば手に入れられるのか?
これらを最初に説明されて理解した上でやっと氏がこの映画に込めた想いというメッセージがぼんやりと浮かび上がってくるのだと思うのですが、

これに関しては間違いなくプロデューサーや脚本家、監督でさえも氏を理解しきれていない部分があるために映画で表現しきれていないと私は思います。

そして、作品を本当に楽しむのであればその作品のテーマを理解すべきでもあると思います。
それが海外作品ならその国の情勢であったり、この映画のように役者さんが想いを込めて作られていたりして、
要するにもっと視野を広げて好きなジャンル以外にも興味を持つべきなのです。

これは私個人の考えになりますが、人間とは個人主義の生き物だと思います。
そしてこの映画では本郷猛は人間のエゴイズムについて高校の教壇に立って熱く語ります。

私の考えによるとの話になりますが、人間は個人主義であるために自分のために善人は善行に励み、その副次的な事実として他者が救われたりして、善人を善人足らしめているのです。
それとは反対に自分のために悪人は悪行を重ね、その結果として他者に危害をくわえるのです。

そして、善行にしろ悪行にしろより大きなことをしようとしたら他者と協力しなければならないこともあります。
それは誰のためかというと、一番はまず他でもない自分のためですよね。

本郷猛は藤岡氏の実際の経験にも基づいて戦争、暴力、飢餓を通して人間の醜い一面を指摘しています。
その上で本郷猛は自分の父親のようだった存在の立花藤兵衛の孫娘に、人間を守る闘いはお前のためでもあったと語ります。

これを私は世界の平和のためには人間同士が手を取り合う必要があるんだよと、そしてそれを成し遂げれたらそれは愛を証明することにもなり、愛というのは人間一人一人の心の中に存在しているのだと、氏からのメッセージをそう解釈しています。

そして、この映画はそれだけではなくヒーローは絶対に死なないという強い想いとが並行して描かれていて、本郷猛は決して人間に絶望していて闘いを放棄したわけでもなく、
昭和のヒーロー像は完全無欠の存在であり、命とはかけがえのないものということに関して古いと言い放つのは決して正義というものを本郷猛が馬鹿にしているからではありません。

それとは別に死期を悟った本郷猛はある意味で他人任せな弱気を見せてもいます。
その証拠に仮面ライダーゴーストに突き放すような激励と態度を見せ、最期は娘のような存在の立花藤兵衛の孫娘と過ごしたかったわけです。

これは平成以降における不完全というと語弊がありますが、悩み苦しむ等身大のヒーロー像にも見えてきます。

この映画は私個人としては星5を贈りたいところなのですが、まずその素敵なメッセージに反して、これは先ほどの通りプロデューサーや脚本家、監督陣の理解の甘さと、それによる気軽に他者へ薦められないという点で星4としました。

私のレビューが少しでも参考になれば幸いです。
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