からから亭

怪獣の日のからから亭のレビュー・感想・評価

怪獣の日(2014年製作の映画)
4.0
話題の問題作(?)『大怪獣のあとしまつ』からの流れで『怪獣の日(2014)』の存在を知った。
 同じ怪獣の死体の扱いを題材にしているが、本作は明らかに原発事故と廃棄物処理をテーマとしている。しかし、導入部は『平成ガメラ三部作』を彷彿とさせるシリアスな本格SF映画の雰囲気が溢れている。
 政府の記者会見から、緊迫感のある音楽をバックに新聞記事で事件の推移を読ませていく手法は王道の演出だが、怪獣映画の「型」を効果的に使っていると思う。
 大学の紹介ビデオの撮影風景、という体で教授と助手と登場人物の研究分野がさらっと分かるようにまとめられ、そこに電話がかかってきて、いよいよ物語の現場に、登場人物が集合する流れも上手い。30分の短編で字幕やナレーションを使わず、わずか3分で観客をその世界観に引き込む、完璧な導入部ですね。
 続く「怪獣はすでに死んでいる?」のシーンも、登場人物(研究者陣)の抑えた演技がシリアスで、ミステリータッチでもあり、緊張が持続します。そして、政府側の登場人物のやや誇張された悪者っぷりが、まあこれは判断の割れるところでしょうね。たぶん『シン・ゴジラ』以降に作られたなら、悪者側ももっとドライで、会話のテンポもさらに速くしたのではないかな。
 ともあれ、死んだ怪獣は安全なのか(本当に死んでいるのか)、政治家と科学の対立、怪獣の死体は誰が処理するべきなのか、処理方法はどうあるべきか、保管施設の建設による地元自治体への補助金をとるか住民の安心安全を取るか、不安を感じる人が自主避難をするのか、等など、その後のストーリーは、原発事故の後始末にまつわる全ての議論を全部入りにした感じ。
 まあ、お話の11分辺り、町長が死んだ怪獣は廃棄物であり、その処理責任は当該自治体にあることを話しだしたあたりから、誰にも、これは核廃棄物処理の暗喩だと分かるでしょう。
 そう思って、改めて見直せば、怪獣の処理に関わる会話の"全て"が、原発事故の後処理の話であることが分かると思います。


 『シン・ゴジラ』が怪獣を原子力災害に見立てて、政府側を主役にしたエンタメ成分てんこ盛りの作品であるのに対して、『怪獣の日(2014)』は学者と住民運動が中心の、エンタメ抜きのシリアスな作りです。しかし30分の短編だと余分な盛り上げ一切なく、怪獣で原発事故を語ることに全集中した作りが功を奏しているように思います。

小ネタ:
・教授と助手(主人公)の名前が「平田」と「長峰」で、これは『ガメラ 大怪獣空中決戦』と一致。導入部の演出手法の一致を見ても、かなりのオマージュっぷりである。
・舞台の「浜江町」は福島の「浪江町」のオマージュでしょうね。
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