一人旅

昔々、アナトリアでの一人旅のレビュー・感想・評価

昔々、アナトリアで(2011年製作の映画)
4.0
第64回カンヌ国際映画祭グランプリ。
ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督作。

トルコの鬼才ヌリ・ビルゲ・ジェイランが2011年に手掛けたサスペンスで、遺棄された遺体の捜索に当たる人々の姿を見つめます。

殺人事件の容疑者を連れて、彼が何処かの地中に埋めたとされる被害者遺体を捜索するためトルコの地方部を巡る検事、警察、医師、穴掘り係らの動向を描いた“群像サスペンス”で、ヌリ・ビルゲ・ジェイランらしい静謐な筆致と人間に対する深い洞察が見受けられる大作となっています。

容疑者の犯行時の記憶を頼りに、遺体が埋められた可能性がある場所を複数の車に分乗して捜索する人々の姿をトルコ地方部の原風景を背景に淡々と映し出した作劇が特徴で、移動中の車内や近隣の村での食事の場面等での人々の会話劇を中心とした硬派な作りとなっています。

彼ら関係者たちによる遺体捜索の道程とその後を描いて、人々の表層的な行いや言葉の裏側にある善意と悪意を浮かび上がらせた骨太な“人間考察劇”であり、隠された遺体の掘り起こしという行為が人間の秘めた思惑の発露へと結びついていきます。

硬派&会話劇中心の作劇で上映時間も2時間半と長尺であるため、鑑賞にはそれなりの体力を要しますが、ヌリ・ビルゲ・ジェイランの真骨頂である人間心理への深い洞察に唸らされる力作であります。
一人旅

一人旅