むらむら

昔々、アナトリアでのむらむらのレビュー・感想・評価

昔々、アナトリアで(2011年製作の映画)
5.0
「昔々、あるところで」という昔話の冒頭をもじったようなタイトル。せっかちな人には絶対勧められない、トルコ発のスローライフ推奨ムービー。

トータル157分。

冒頭の80分、ずーーーーーーーーーーーーーーーーっと車で移動してるだけ。

最初観たとき、「車で移動してばっかりだなー」と思って、ウトウトして寝てしまい、起きたらまだ、変わらず車で移動してた。

「えっ、一時停止、押してたっけ?」と勘違いしたが、そうでないことに気付いて愕然。

気を取り直して、再度、冒頭から鑑賞。

車で移動している理由は、殺人事件の容疑者を連れた現場検証。

警察や検事、検死医ら約10名が、3台の車に分乗して、供述に基づいて埋められた死体を探しにいく。だが、そこはトルコの広大な大地。「あー、こっちだっけ」「あっちだったかも……」って、容疑者の供述もなかなか要領を得ない。たまに車を停めたかと思ったら「あ、やっぱ違った。ごめんごめん」って謝られて、また出発。これが続く。

容疑者兄弟、車の中でウトウトして「寝てんじゃねーよ!」って警察から小突かれたりする。俺も画面を観ながら、「次、ウトウトしたら、こいつら撃っていいよ!」と警察に声援を送っていた。

しまいには、警察も遅々として進まない捜索に飽きたのか(この時点で開始40分くらい)、「あー、俺ちょっとトイレ行ってくる」と、トイレ休憩が挟まれる。しかも何度も。

あ、ちなみにこの一連の捜索、なぜか真夜中に行われていて、画面が全体的に暗い。これもまた睡魔を誘引する要因。というか、なぜ真夜中に捜索してんのよ、探す気ないでしょ……。

この時点で開始50分くらい。
そうこうしてると

「あー、もう見つかんねーから、飯でも食いに行くか」
「いいっすねー」
「場所、探しといてよ」
「このへんの村とかいいんじゃないっすか?」
「じゃー、寄ってみるかー」

という会話があって、本当に村に行ってご飯を食べ始める。

……このシーンが始まったときには、「お前ら、何サボってんじゃーっ!」と、全員ブチ殺してやりたくなった。

ようやく物語が動き出すのは、最初に書いたように映画が始まって80分くらい経ってから。その物語自体は考えさせられる内容だし、かなり考察のしがいのある奥の深い映画であることは間違いない。

とはいえ、前半の車移動シーンが長すぎて、観終わった今としては、映画を一本観たというより、睡魔と一戦を交えた気分。

「『惑星ソラリス』を余裕で完走」「不眠症で困っている」「明日仕事/学校なのに憂鬱で眠れない」「寝ると変な街で、手に鉤爪のついたオッサンが襲ってくる」という方には文句なく★5のお勧め作品。

以下、余談。

俺、トルコ行ったとき、めっちゃ獣臭いラム肉を出されて、全く手をつけられなかったことがある。それ以来、よくトルコ人はこんな臭い肉食えるなーって感心してたんだけど、この映画に「お前、ラム肉みたいに臭いぞ」って台詞があって笑った。トルコ人も同じこと思ってんのね。
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