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パレードへようこそのchsyのレビュー・感想・評価

パレードへようこそ(2014年製作の映画)
4.5
この映画の中で活躍する人々は皆、人生 を真面目に生き、偏見のない柔軟な頭で考えようとする人々だ。
ウエールズ州ブレコンビーコンの丘陵地 帯、緩やかな丘の連なり、こんななーんもないところで鉱山だけが唯一の産業であることは容易に想像がつく。
同じウエールズの炭鉱町を舞台にした映 画「わが谷は緑なりき」が日本で公開されたのは1950年。
その後も、リトルダンサーやブラス!な ど炭鉱の労働争議を背景にした作品は多い。
それぞれ胸を打つ忘れがたい作品だった が、本作は炭鉱労働者だけの主張にとどまらない、普遍的な人権闘争として、より多くの共感を得られたはずだ。

それに加えて、全く住む世界の違う者同 士が力を合わせるという理想的だが、なかなか実現しない闘争があったことの重要な記録でもある。
違いを認めつつ共通の課題で共闘し、そ れぞれの主張を尊重する。
炭鉱夫と同性愛者。普段接点のないはず の団体が苦悩の末に融合して生まれた成果は、感動的な歴史として後世に語り継がれる。

何度も映されるイングランドとウエール ズ州を繋ぐ橋や寒風吹きすさぶ荒野、最後のパレードはロンドンの国会議事堂とビッグベンを背景に、と多様なイギリスの映像も魅力。

アンドリュー・スコット演じるゲシン、 十数年ぶりのウエールズ語での会話に涙するシーンが印象的。ゲイであることで民族の誇りさえも封印しなければならなかった悲しみが映し出され る。
80年代初頭、彼らは今の何倍も生きに くかったのだろう。
同性愛者の権利を主張した黎明期の貴重 な記録でもある。
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