あきら

パレードへようこそのあきらのレビュー・感想・評価

パレードへようこそ(2014年製作の映画)
5.0
今まで見た映画の中でも最高の1本。実話ということも相俟って人生の指針にしたいくらい素晴らしい。

1984年、サッチャー政権下のイギリスで炭坑閉鎖案に対するストライキが起こってから4ヶ月、炭坑労働者たちの資金はすり減っていくばかりだ。
そんな様子をニュースで見たマークは支援団体を作ることにした。「警察と戦ってるのは俺たちも彼らも同じだ」
そうして集めた募金を炭鉱労働者とその家族に届けようとするも、誰からも断られてしまう。
支援団体の名前はLesbian and Gay Support the Miners、“イミテーションゲーム”から30年、同性愛が違法でなくなってから15年、彼らはまだまだ偏見の目にさらされていた。

ストライキをする労働者は金銭的な援助を、セクシャルマイノリティは正しい理解を、求めるものと与えられるものがそれぞれ違って、弱者だからと単純に一くくりには出来ないからこそ補い合い、助け合わなければならない。
社会的に立場の弱い人たちが自らの地位向上のために戦うという話は数あれど、共闘する物語はより普遍的だ。
「俺たちの権利だけ認められてもしょうがないだろ」というスタンスを貫き通す姿は本当にカッコいいし、多数派か少数派かによらず大切にすべきだろう。

また、当時の労働組合で実際にゴタゴタがあったように、境遇が同じ者同士でも完璧に一枚岩になることはできない虚しさがある。
“同性愛者という未知の存在に出会った時どう思うのか”
そんな価値観の違いから生まれる衝突、という形でそのゴタゴタが分かりやすく表現されていたと思う。

偏見、エイズ、クローゼット、クィアという言葉の意味の変遷、多くの問題が可視化され始めた80年代を重苦しくなく描いた、最高に笑えて泣けるエンタメ作品であり、当時まだ生まれていなかった私ですら、確かにこの歴史を通りすぎてきたからこそ今があるのだと確信できる作りが素晴らしい。
あきら

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