かえで

世界から猫が消えたならのかえでのレビュー・感想・評価

世界から猫が消えたなら(2015年製作の映画)
4.2
「何かいい物語があって、それを語る相手がいる。それだけで人生は捨てたもんじゃない」
良い言葉だなあ。

万人受けはしないだろうけど、個人的にはとても好きな作品でした。随分前に読んだ原作は全然好きになれなかったけれど、この映画はすごく良いなあと思えた。

全体的にストーリーは結構分かりづらくて説明不足。でも、わたしはこの曖昧さこそが本作の良さだと思う。ぼんやりと途切れ途切れな回想シーンは記憶ってこんな風に曖昧なものだよなと納得できたし、現在と過去のシーンがこまめに移り変わるのも死ぬ直前の頭の中ってまさにこんな感じなんだろうなと思えた。ストーリーを俯瞰的に楽しむ、というよりは「僕」の頭の中を一緒に覗いているような感覚。劇中の言葉を借りれば、「考えるな、感じろ」と、個人的にはまさにそんな作品でした。全体的に白みがかった映像も綺麗で、少し現実離れした感じがして好き。透き通る冬の冷たい空気を感じられるような雰囲気もすごく好みです。音楽がうるさかったのだけが残念なポイント。

僕と彼女のあんな出会い、ロマンチックですごく良いなあと思ったし、宮崎あおいちゃんが本当に本当に可愛い。濱田岳演じるツタヤと僕のシーンはどこを取ってもなんだか涙があふれたし、お母さんが猫と額をくっつける仕草がとっても可愛らしくてずっと頭に残ってる。原田美枝子さんってどうしてあんなに病弱のお母さん役が似合うんだろう。

鑑賞後は頭の中でふとBUMP OF CHICKENの楽曲が。「誰の存在だって世界では取るに足らないけど 誰かの世界はそれがあって造られる」(supernova) 「僕を無くしてもあなたでいられる それでも離れずいてくれますか」(66号線) 。そんな物語なのかな、と私は解釈しました。
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