つおし

世界から猫が消えたならのつおしのネタバレレビュー・内容・結末

世界から猫が消えたなら(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

悪魔によって提示された一日生き延びる条件は、自分の代わりに何かを世界から消すこと。
電話を消し、映画を消し、時計を消し、猫を消す。
その経験によって人や物の一つ一つが世界にとって尊い存在であることを再認識して、自分の死を受け入れていく話。
しかし彼は悪魔ではなく、自分の内部に潜在するもう一人の自分であり、この話は死を目前にした自分と彼との自問自答の話でした。
彼には自分が死んだら泣いて悲しんでくれる人がいるのかという大きな不安があり、それに苦しんだ結果としてもう一人の自分という幻影を作り出し、更には本当に物が消えていく世界まで作り出したのです。
余命宣告をされたら人は意外と冷静だと言うんだけど、泣き叫ぶよりアクティブなリアクションだよね。
死というものに支配される日々を送るんですから。
要らないと思っていた物がいざなくなると自分の世界は全く別なものになるんだと知り、この世界から消えて誰も悲しまないものなんて存在しないってことを自覚していく。そうしてその苦しみから回復することで死を受け入れていく。
この映画は、作中にたくさん映画が出てきてたのしいんです。リバイバルなのかなんなのか映画館では'99年のファイトクラブと一緒に'04年の花とアリスが一緒に上映されてたり、宮崎あおいと出会うきっかけとなった映画はメトロポリス。随分古い映画を観てるよね。大体音楽だけでメトロポリスとわかる宮崎あおいのほうがツタヤと話が合うんじゃなかろうか。
ツタヤは本当にかっこいい奴で、喋っていても映画の台詞が出てきていつもたのしい理想の友達(映画好きにとって)。
濱田岳の演技もすごくて、初対面時のアンダーグラウンドを観れなかった話をするシーンは映画への愛が滲み出る語りっぷりで泣けます。
ツタヤが働くレンタルショップでも返却DVDを処理するシーンなんか隅々まで映画ばかりでたのしい。
死ぬ前に観る一本を泣きながら漁るツタヤなんて共感による涙が押し寄せてきます。
ツタヤのいいところはかっこよくなくて童貞感に溢れているところ。こうでなくっちゃ!って感じ。
一緒にバイトしてる子が金髪で、見るからに周囲から浮いた感じの女の子で映画も詳しくて、好きなタイプはマルチェロマストロヤンニと言い出さんばかりの雰囲気で、そんな女の子を毎回映画デートに誘おうとしてる感じとか根暗な映画オタクにとって共感できて最高なんです。
ライムライトのポスターが消えていくのが一番泣けましたね。
何が言いたいかというと根暗映画好きは一度ツタヤに会うべきですのでとりあえずツタヤへ行きましょう。ってことなんです。
つおし

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