くりふ

男のゲームのくりふのレビュー・感想・評価

男のゲーム(1988年製作の映画)
4.0
【男らしく潰そう】

昔々、シュヴァンクマイエルを知った時、最も、と言えるくらいに面白かった逸品。

久しぶりに見返して、やっぱこの人スゲエと思った。初見では、人体破壊のブラックな描写そのものに惹かれたが、今回は、“有害な男らしさ”と、それが形づくる集団がどう変態化するか?を笑い飛ばしているのが面白さの本質だ、と今さらながら気付かされる。

原題がまさに“男らしいゲーム”になっているが、男って、要するに破壊することが好きなんだよね。

サッカーという、“スポーツマンシップに則った”試合をする筈が、その競技場はコロッセオのような殺し合いに発展し、観客はそう来なくっちゃと熱狂する。やがて選手も観客も、審判までもが同一化する。“試合”から産まされ続ける死体は、淡々と機械的に処理される。

参加者は皆、それが大きなシステムの一部だと理解して、考えることは止めて楽しもうとしている。つまり、シュヴァちゃん映画あるあるだが、これは大きくは社会主義を皮肉る構図でありましょう。

振り返ると、女性がまったく登場しないことも、たいへん男らしいと思います。

しかしまだまだ、男が男を心から笑い飛ばせる時代には、至っていませんよね。

<2024.5.9記>
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