MasaichiYaguchi

天空からの招待状のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

天空からの招待状(2013年製作の映画)
3.4
この作品の予告編を観ると台湾観光PR映画のように感じられるが、実際に鑑賞してみると社会派ドキュメンタリーだった。
本作の企画・監督・撮影・編集まで一人でこなしたチー・ポーリン監督の情熱と労力には脱帽してしまうが、膨大な撮影資金を調達するのに相当苦労したらしい。
そんな苦労を克服して撮影された風光明媚な台湾のパノラマは息を呑む程美しい。
ただこの映画は美しいだけの作品ではない。
チー・ポーリン監督は政府の航空写真家だっただけに、ジャーナリスティックな視点で台湾の今を切り取っていく。
台湾は文化や風土、自然等において日本とは違うが、映画に登場する田園風景やそこで営まわれる生活は似通っていて親近感を覚える。
映画の冒頭で台湾の圧倒的な美しさが映し出されるので、転調した中盤以降に展開する台湾の現状は、正に監督による「空からの告発」だと思う。
愛国者の立場から台湾を俯瞰して描いた作品ではあるが、この作品のテーマは決して我々にとって無関係なことではない。
本作で訴えていることは日本にも当てはまることだし、更には世界規模で考え、取り組んでいかなければならないことだと思う。
映画は現状を告発するだけでなく、最後に未来に向けての提言を我々に投げ掛ける。
「児孫のために美田を買わず」という西郷隆盛が残した名言があるが、現代は逆に金や労力を惜しまず児孫のために美田を残していかなければならないのだと思う。