津軽系こけし

ナイスガイズ!の津軽系こけしのレビュー・感想・評価

ナイスガイズ!(2016年製作の映画)
4.1
汚いリーサル・ウェポン


【70年代だこのやろう】

70年代という時代設定でこの内容はちょっといろいろ思わせぶりである。70年代といえば、ポルノ映画界隈ではXXXレートによる大幅な規制緩和があって、デトロイトの歴史でいえば日本車の代等による自動車産業の没落がある。

監督・脚本のシェーン・ブラックが、デトロイト没落後を舞台にした「ロボコップ」という作品に出演しているというところも、なんだか関連しているように思える。

さらには、脚本を務めた「ラストアクションヒーロー」という作品では、ニューヨークの痛烈な治安批判の意が込められていた。あの作品は、デヴィッド・アーノットという人物との共同脚本であったが、この「ナイスガイズ!」をみたところ、あの描写はジェーンのアイデアなのだろう。

彼の関わる作品には必ずといっていいほど「都市」と「犯罪」という要素が内在している。しかし、それを真摯に表現することはなくあくまでエンターテイメントの枠組みの中で半ば飾りとして機能させている。あくまでも軸となるのは「リーサル・ウェポン」じみたバディストーリーなのだ。

彼が同じく脚本・監督を務めた「キスキスバンバン」という作品も、視聴したことはないが犯罪都市に住まう泥棒が探偵とタッグを組むという内容らしい。やはり、似ている。

【犯罪都市でどう生きるか】

これがおそらくジェーン・ブラックという人物の人生命題なのだろう。あいにく「リーサル・ウェポン」なんかは映画好きになる前に観た作品だから、記憶が曖昧すぎて今作との比較には至れない。

しかし彼の作品群を比べてみると、そこには犯罪や悪にどうにか立ち向かおうとする純粋な眼差しがある。例えば今作には、ラッセルクロウが悪党を殺す折に、13歳の子供に諭されるシーンがある。あれはまさしく監督の主張そのものなのだろう。

そしてこの映画の下品さは、映画が表現の自由を勝ち取った70年代という時代を高らかに賛美しているようにも受け取れる。

【面白いけど!中途半端!】

今作の下品なユーモアや、役者陣の破綻ぶりは痛快で確かに面白い。ちょくちょく笑えたし。しかしながら、わたしにはどうにも監督が自身の命題を押し殺してわざわざエンタメに傾倒しているように見えてならない。
今作はたしかに面白いが、ちょくちょく引っかかるところもあった。この内容だから「真剣に観る方がどうかしている」と思われるかもしれないが、私は彼の真剣な作品が観てみたいと思うのである。

【なにやってんだろ俺系まとめ】

こんなコメディ映画にここまで思考を凝らすとは、私も相当ひま人のようだ。見やすかったし、下品すぎて面白かった。ただ、ギャグの系統がアメリカ肌ゆえに日本ではあんまり評価高くないみたい。

そして最低なゴズリングってこの映画以外にある?すごく珍しかったです。

娘役がかわいい
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