せいか

ナイスガイズ!のせいかのレビュー・感想・評価

ナイスガイズ!(2016年製作の映画)
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8/7、Amazon videoにてレンタルて視聴。
想像してた通りの気軽に観れるコメディー映画なのだけど、思いのほかドンパチして気持ち社会派もしていた。
殺し屋としてマット・ボマーさんが起用されているのだけど、恐ろしいほどのハンサムフェイスでかっちりスーツまで着ていて慄いていた。

舞台は1970年代後半のアメリカで、シングルファーザーの緩すぎる探偵と強いししっかりしてはいるけどなんか地上げ屋的なノリがある示談屋の二人を主人公にするタッグもの。自然環境問題と車社会と汚職が渾然一体と化して、なんだか話が大きくなっていく。登場人物の頭は総じてあまりよろしくはなく、気楽に観るくらいでちょうどいい。

70年代のアメリカってもっと社会の空気感としていろいろありそうなものだけど、正直、観ていてこの時代設定である意味はそこまで感じられないというか、必然性がないというか、そこに自然と意識が向くことがびっくりするくらいない。戦争とかオイルショックとか経済とか社会問題、政治とか何もその空気の中にないというか。強いて言えば話の中心にある車社会と大気汚染の話なんかはまさに当時を反映しているところではあると思う。その意味ではオイルショックも関係するのだけれど。ただ、もっとあのへんのアメリカのことにアンテナ強ければ拾えるものもあるのかもしれないとも思うけれど。同様に、ロサンジェルスを舞台とすることにも必然性を私は感じられなかったのだけれども。
車社会が化関わる話なのでアメリカのそのへんの工業を語るのにも欠かせないデトロイトのことにも気持ち触れていたり、ちょうどこの時期がまさに日本車に追い上げられていく時期と重なってアメリカの車の工業に陰りも落ちていく時期で、汚職が起きたところで民衆たちはどうせそのうち燃費のいい日本の車に乗り換えるだけだみたいな終盤のセリフがあるけど、なんとも話の無意味さに繋がる感じがする。人々がリークのために命をかけたりリークを防ぐために血に染めようとも資本主義社会は形を変えながらまわり続けるというか。そんな重たい話してはいないんだけども。結局のところ、人間が求めるのは己がいかに快適さに過ごせるかってことよねとはちょっと思いはする。

あと、本作、女性のセクシュアルなところも中心にあって、ロリコン的なものもすごく出てくる。大人びたないしはませた子供と大人の男という組み合わせが性的な関係含め、こちらは性的な関係ではもちろんないけれど、まさに主人公バディとその娘にもあったり。この娘もアダルトな世界に首を突っ込みすましているところがあって(それくらいじゃないと本作の中心人物として活躍できないのだけれども)、そういう平然と振る舞われる性、キャラクター性がやや目につく。性風俗規制問題なんかも扱われてて、タブー視される性と欲望の矛先として貪られる性と、そしてそういうアンビバレントな立場にあるものを利用するものがあったりとか、この点についてはちょっとおもしろかったかもしれない。やっぱり作品としては少なくとも表面上はそんな真面目にやってるわけでもないのだけど。

汚職でまわる社会の暗部に娘が殺されることになっても平然とその中央にいる権力者の母親とか、無責任社会の風刺っぽくもある。自分の権力の下でどれだけの泥沼が起きるかは知らないで自分だけ澄んだ所にいる感じ。そこは怖いなと思ったり。とはいえやっぱりそんな真面目な話ではないのかなとも思う以下略なんだけども。
せいか

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