Cocoon

おみおくりの作法のCocoonのレビュー・感想・評価

おみおくりの作法(2013年製作の映画)
5.0
人の死を正面から描いた良作。
死を身近に感じたことがある人じゃないと、この映画の良さはわからないと思う。
寂しくも人間らしい生き方とは何か、人が死んだら何が残るのか、死について考えさせられる。

大切な人を亡くしてから、どう生きるべきかと思いを巡らせるけど、独身の中年以降の生き方(死に方)を描いた作品はとても少ない。

都市化に伴い地縁が途切れ、隣近所に誰が住んでいるかわからない。結婚する人も減り、離婚する人も増え、核家族化で高齢者は結婚してても配偶者は死んで独居。こういう状況はロンドンも同じなんだと思った。

淡々と孤独な生活を描きながらも、行動を起こすことで少しの彩りが変化をもたらし、それでも現実的なラストに着地したと思う。

たぶん、生きている意味を家族や友人や職場に必ずしも求めず、自分なりの生き方に忠実に生きた彼も、またさまざまな人と関わり、さまざまなものをこの世に「残した」。作中に彼へ投げかけられる上司の言葉へ、ラストで返答しているのではと思う。
この作品は必ずしも人に囲まれて死ぬことが幸せだと言う単一的な死にまつわる一般論への、アンチテーゼを提示したんだと思う。そうとは限らない、違った生死の価値を問いかけているのではないか。

みんながみんな家族に囲まれて死ぬわけじゃないし、むしろ今では少数派だろう。
晩年や死ぬ時は一人だったとしても、故人を気にかける人、記憶に留める人はいる。人生のどこかで縁の切れてしまって葬儀に来なかったとしても、生きていた以上はどこかで誰かと必ず触れ合っていて、どこかに残っている。
自分が死んだとしても、私の亡くした人も、そうして生き続けるんだろうなと思った。
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