和桜

おみおくりの作法の和桜のネタバレレビュー・内容・結末

おみおくりの作法(2013年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

身寄りのないまま亡くなった人達を見送る市役所職員。効率化を主張する上司とは対照的に、時間をかけて誠心誠意寄り添うことで彼らの人生や生き方が見えてくる。猫を娘として可愛がり娘からの手紙まで自作する話は覗き見してるようで悪趣味に感じてしまったけど、主人公の敬意ある追悼文はそんな感情も拭い去ってくれる。なかなかに魅力的な主人公の姿勢。

「葬儀は死者のためのものじゃない、弔うものがいなければ不要だ。残されたものにしても、葬儀や悲しみを知りたいとは限らない。」という上司の意見がかなり核心的な部分で、この作品のテーマにもなってる。死者の思いや死後の世界を心の底から信じ切れない、葬儀が残された者のために存在する現代において、この映画は死者の存在を見せた上で彼らのためのものでもある事を示してくれる。
このテーマとそれに対する解答や姿勢が本当に好みで、これだけだったら大好きな映画になってた。

なのに!
なぜラストをあんな展開にしたのか。
終わり方として主人公が死ぬのは分かる。この映画の根本には死後の世界や死者の存在があるからこそ、死ぬことはさほど重要なことではない。信じているからこそ生まれる確固たる死生観を持った作品だし、むしろ自分は好きなタイプの物語。
だけど、これから新しい人生が始まる的なフラグを立てて殺す必要はなかった。ここまで死を丁寧に敬意を持って描いてきたのに、これだと死ではなく製作者による殺人になってしまう。独特の世界観があったのに、ドラマティックにしたかったのかはわからないけど残念。
でもテーマやラストの言いたいこともよく分かるので、両極端という意味で点数がつけられない。こういうテーマの映画が増えて欲しいな。
和桜

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