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サンバのRyuのレビュー・感想・評価

サンバ(2014年製作の映画)
3.7
フランスに来て10年。ビザのうっかり失効で国外退去を命じられてしまったセネガル人の青年 サンバ。そんな時に移民支援協会で担当となった燃え尽き症候群の元キャリアウーマンのアリスや日雇いの仕事を紹介してくれる陽気な移民仲間 ウィルソンと出会う。

日本だとあんまり馴染みのない移民問題。証明書というただの紙切れがないだけで仕事にも就けず、家にも住めない。そればかりか警察に追われることになる。そりゃ法律違反かもしれないけど、やはり不憫でならないです。
テーマは非常に重たいものを扱っているのですが、サンバのキャラクターやそれを演じるオマール・シーの笑顔などがあって、作風はとても明るいものとなっております。なので観ていてそこまで辛くはならないです。むしろこっちまで笑顔になってきます。徐々に近づいていくサンバとアリスの関係やウィルソンとの楽しいやり取りには思わずニヤニヤしちゃいます(笑)。
今作の評価が低いのは「最強のふたり」の名前のデカさもあるんじゃないかと思います。監督と主演が再びタッグを組むとなると必然的に期待値はめちゃくちゃ上がってしまうでしょうね。「最強のふたり」はまだ観ていないので、その点はなんとも言えませんが…。
あともう一つ、ラストの展開も評価が低くなってしまう要因になっているのではないかと思いました。確かに根本的な解決には至っていないし、ちょっと人としてどうなん?って思ってしまう展開ではあると思います。しかしそうせざるを得ない、落ちてるものは拾って使わないと生きていけない。この移民仲間の深刻さを物語っているように思いました。これをあんなふうに爽やかに終わらすのがなんともフランスらしいエッジが効いている感じがして好きです。
移民問題と燃え尽き症候群。どちらも生きることよりも生きるためにしていることが大きくなってしまっている という共通点があるテーマ。決して楽しいテーマではないけど、それを楽しく描いて、考えなければいけない部分はちゃんと伝えてくれる。そんな作品だったように思いました。
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