えんさん

サンバのえんさんのレビュー・感想・評価

サンバ(2014年製作の映画)
3.5
日本でも単館系で大ヒットをした「最強のふたり」の監督と、同作で印象的な介護士役を演じたオマール・シーが再びコンビを組んだ本作。映画としては、ヨーロッパ映画ではよくある移民問題を取り上げた作品になっていますが、移民問題という枠に当てはめないまでも、一人の男と女が、不幸せな境遇から寄り添いながら、幸せを掴んでいこうとする様を描いた作品になっています。「最強のふたり」ほど、大きな展開がある映画ではないですが、日常の不遇にもめげずに一歩一歩進んでいこうとする人に対する応援歌的な作品だと僕は感じました。

セネガルからフランスにやってきて10年が経った青年サンバ。職場では真面目に働いていたが、ピザの失効に伴い、国外退去命名を受けてしまう。そんな彼を支えたのが、移民支援のボランティア団体で働くアリス。彼女はもともと大手の人材会社で働いていたが、心のトラブルを抱え、休職中の身。不遇な境遇でも常に前向きのサンバに、疲れきったアリスの心は徐々に開いていくのだった。。

日本でも東南アジアを中心に、就労している人たちが年々増えていますが、長年移民問題を抱えるヨーロッパ諸国ほどではないかもしれません。でも、不遇な扱いでもめげずに前を向いていく姿は、移民問題ほどではないものの、下流社会に象徴されるように、社会の中でも正当な評価を受けずに生きていく人にとっても、希望が見えるような物語になっています。「最強のふたり」でも感じていましたが、主役のオマール・シーの懐の深い演技力は、本作でも遺憾なく発揮されています。この人の役者としての包容力というのは天下一品。アリスを演じるベテラン俳優シャーロット・ゲンズブールでさえ、食ってしまうような勢いすら感じます。この人の今後の出演作も注目かもしれません。