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FOUJITAの&yのレビュー・感想・評価

FOUJITA(2015年製作の映画)
3.5
【2015/11/18:角川シネマ有楽町】
狂乱のパリでパーリィピーポーな人気画家として成功したフーフー(フジタの愛称)と、帰国した戦時中の田舎で欧州帰りの画家先生として戦争画を描いた藤田。その後戦犯に問われパリに戻り帰化、二度と日本には戻らなかったーー。
そんなフジタから見た世界はきっと、いたく理不尽で空虚で、なんというか…作劇・脚色するならものすごくオイシイ素材だと思うのだけど、藤田の内面の掘り下げがほとんどないので、ただ静かなだけの作品になってしまってる。もったいない。伝記映画にする必要は全然ないと思うけど、最低限の情報すら足りないし、フジタという人にもっと迫ってほしかった。

例えば、晩年パリに戻った彼が残した「私が日本を捨てたのではない、日本に捨てられたのだ」という言葉がもし劇中にあれば、前半のパリでのセリフ「わたしにとってここは外国です」が深みをもって活きたのにーとか、彼が好んで描いた猫なんてフジタの孤独を描写する小道具として超オイシイのになぜ活用しない?とか。ラストの控えめさは嫌いじゃないが。

映像は確かに美しいのだけど、日本パート(ロケ素晴らしい‼︎)に比べるとパリパートのショボさが目立つ。ラスト近くのファンタジー展開は、おそらく監督が最も撮りたかった画なのだろうけど、そこに紛れ込むあのCGはほんっっとうに蛇足。「加瀬亮もオダジョーも頑張ったからそれ不要ですよ」ってちゃんと意見できる人いなかったのー?!と心配になるレベル。俳優陣が素晴らしいだけにとても残念。

といいつつも、学生の時、西洋絵画研究のテーマに藤田嗣治を選んだ程度に彼の作品や生き方に興味があるわたしはそれなりおもしろかった。でもそれはある程度の知識の土台があったから。なので、酷評されてるのもわかる。
宣材のコピー「パリが愛した日本人、あなたはフジタを知っていますか?」って、だからみんな知らないんだってば!だから内的世界を見せてよ!と。

ちなみに、「ラ・ブーム」でソフィー・マルソーのおばあちゃん(恋多き女という設定)が「アタシは昔フジタと付き合ってたのよ!」みたいなこと言うセリフがあったりするくらいなので、「パリが愛した日本人」てのは誇張じゃないと思います。
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