のき

セッションののきのネタバレレビュー・内容・結末

セッション(2014年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

めちゃくちゃ引き込まれた。ラストのニーマンの狂気的な演奏と、それに呼応し出すフレッチャーの2人のヒリヒリ感がもの凄い迫力。今まで観たことのない結末で、衝撃的だった。『ラ・ラ・ランド』のラストも意外な結末だったけど、どちらもいい意味の裏切りで個人的にはとても好き。

フレッチャーお前は逆JYパークか。予告で観た「情熱と狂気の紙一重」というコピーがまさにという感じ。フレッチャーの指導はパワハラの極みだし、絵に描いたような必要悪って感じだったけど、どんなに罵声を浴びせられても食らいついて名声を得たいニーマンにとっては、ある意味最高の指導者だったようにも思う。

「音楽をやる理由はなんだ?」「音楽をやる理由があるから」この問答がなんかかっこよかった。
フレッチャーにとっては、自分の指導を超えていった先に本物の音楽家への道が開けると信じているから、ニーマンがどうなりたいか、どう思うかは関係ない。フレッチャーはプロの音楽家を輩出したいわけではなく、歴史に名を残す音楽家を輩出することが目標なので、中途半端な覚悟で指導をしていない。そしてそこに確かな知識と実力、カリスマ性、音楽への情熱がある(ここはJYパークとも共通する部分やな)。怯えながら演奏させてる時点で、人を感動させられる音楽家なんて生まれへんやろ、とか素人ながら思ったけど、最後の演奏聴いて、狂気の指導から生まれた狂気の演奏は人を圧倒するんだなーと思った。フレッチャーはそれを計算してた訳じゃないだろうけど。

フレッチャーが狂気的な指導を続ける理由が、「クラシックは死んだ」と言われて久しい現代クラシックへの失望感から来るもので、過去の偉大な音楽家の歴史になぞらえて、圧倒的な挫折を乗り越えた先にしか天才は生まれないと信じているが故だと知って、なるほどーと思った。視座が高すぎるから、生徒や親からはなかなか理解されないけど、究極のプロ意識を持っていてかっこいいと思った。

それに対して、ニーマンが世界的音楽家の名声を得たい原体験はなんだったのかは少し引っかかった。家族との描写とかあったけど、そこまで絶望的なコンプレックスを持ってるようには感じなかったので、フレッチャーの狂気に異常な執念で食らいついていくモチベーションが少し謎だった。

とはいえ、狂気的な指導でボロボロになりながらも必死に食らいついて、だんだんと彼自身が狂気的になっていく姿には凄く引き込まれたし、共感する部分もあった。一つの道を極めようと思ったら、(程度はあれど)全てを犠牲にする時間は絶対に必要。

ニーマンとフレッチャーの演技力がエグい。あんだけドラムたたける演技派俳優よく見つけたなー。フレッチャーの俳優に惚れたので他作品も観てみたい。

個人的に、自己啓発的な意味でめちゃくちゃ刺激になる作品だった。プレーヤーとしては練習あるのみ、指導者としては絶対に求める基準を下げてはいけない。この2つが強烈に刺さった。働き方改革とか○○ハラスメントとか叫ばれる時代に、改めていろいろ考えさせられる映画だった。
がんばろう。
のき

のき