うえびん

セッションのうえびんのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
3.2
観終わってハーッとため息が出た。息を詰めて観ていたことに気づく。

才能と狂気、偉大とは何か。自分には人より秀でたいという志向がないので、アンドリューやフレッチャーの志向が理解できず。最後にアンドリューはフレッチャーの壁を打ち破り、ブレイクスルーしたのだろうけれど、感動というよりは、あー本当にお疲れさまでしたと言って差し上げたい心境に。

アドラー心理学『嫌われる勇気』の中の言葉が思い出された。一流のダンサーを目指すとした場合、キーネーシス的な生き方とエネルゲイア的な生き方の2種類があると。前者は、苦しい練習に耐え続けて一流に到達する、結果重視の生き方。後者は、とにかく楽しいから踊り続けていたら一流になっていたという過程重視の生き方。

フレッチャーが目指すのは、キーネーシス的な生き方だろう。昨今、問題が噴出しているスポーツ界での勝利至上主義の蔓延による行き過ぎた指導にも通じるものがある。

音楽は、音を楽しむと書く。音を奏でることに楽しみや喜びを感じられない奏者が、他者からの称賛を浴びる。そんな音楽に何の意味があるのだろう。最後のセッションは、演奏の技術と迫力には圧倒されたけど、僕にとっての音楽ではなかった。
うえびん

うえびん