ダイナ

セッションのダイナのネタバレレビュー・内容・結末

セッション(2014年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

再観賞。音楽、ジャズの専門的知識が深いと粗に気が散り集中できないそうですが、そこらへん無頓着な自分は無問題。(本作ドラム技術や逸話エピソードの真偽が専門家から見て怪しいらしい)

台本騒動後のドラムに抜擢された後のニーマンの顔。前任への申し訳なさがこんなに微塵も感じられない顔だったかと印象更新。父親は優しい人ですが、フレッチャーと対比してしまうと「ニーマンにとっての」良い点と悪い点が浮き彫りになってしまうのが悲しくも面白い対立構造。家族・恋人への態度や自我が強くなっていく思考(全面的に悪いことではないですが)、フレッチャーからの教育により変化していく姿、気弱な優男が段々と化け物に変わっていくような恐怖が面白く感じてしまう所がこの映画の魅力。

コンサートを台無しにしてまで復讐するフレッチャーの思考、肉を切らせて骨を断つどころか自分の内臓まで犠牲にしてそうな痛手に見えて初見時ついていけませんでした。が、改めて見返すと復讐をここまで優先した思考はそこまでおかしいことではないとも思えてきます。チャーリーパーカーの逸話から、フレッチャーは音楽学校で「伝説的存在」を生み出そうとしていたと考えます。音楽学校は才能が集まってくる最高の厳選蠱毒場所。「密告」は伝説の誕生の可能性を奪うに匹敵するクリティカルヒット大ダメージなのです。そう考えるとニーマンへの憎悪がとても大きいこと、この暴挙に出たとしても割と納得できると思えます。…って思ったんですけど、スカウトたくさん来てるって言ってたしここで指揮者としての評価地道に積んでいけば才能育てる環境に返り咲きやすくなったんじゃねーのとも思える訳で。「現状・今後の仕事」より「復讐心」が凌駕してしまったと。

復讐と復讐がぶつかった極地。素晴らしい。自分がこの映画で一番心をグッと掴まれるのは黒人兄貴がウッドベース(?)でセッションに一番乗りしてくれる所。かっけぇよ兄貴。「合図する!」でウッドベース。ピアノ。場に飲まれるフレッチャーが指揮を始め参加するメンバー達。着火した火種に焚べられた薪のように各楽器がセッションに飛び入り炎がとても大きくなっていくような迫力。音が消える演出、2人の世界、客を置き去りにしたこの研ぎ澄まされた空間に飲み込まれる感覚がとても好きで数年おきに見返したくなります。
ダイナ

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