おそばマニア

セッションのおそばマニアのネタバレレビュー・内容・結末

セッション(2014年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

いい映画。けど、ガールフレンドのニコルは最後までどうにもならず、恋愛の描き方はあまりにもひどい。いいところが編集でなくなっちゃったのかもしれないと思ってスクリプトを読んでみたけどなにもない。ふたりがピザ屋でしゃべってるときにテーブルの下で足が微妙に触れ合うという本作一番のラブシーンは、もともとは足でなく、膝だったということだけわかった。

正直、こんなハゲみたいなのがスパルタ教育しなくたって、チャーリー・パーカーのような天才は現れるときには現れる(逆にいえば現れないときには現れないし、現れても死んでしまったりうまくいかなかったりする)とは思う。でも、そんな古くさい成功論はどうでもいい。人間というのは、モテたいとか、認められたいとかそういう、ふだん日常的に考えていることと違う、純粋に内発的な「クソが!」、「やるぞ!」、「どうでもいいわ!」みたいな、ぜんぜん言語的じゃない、とにかく「ウオオ!」っていうなにか、エネルギーを持っているわけですよね。それはいってしまえば禅みたいな、意味・非意味という枠を越えた、言葉では捉えられないなにか。この映画のラストはそういう、ど根性、スポ根っていう非合理的なもののもっている「とにかくヤバい」という魅力がとても感じられる。「なんかいろいろゴチャゴチャあったけどもうしらねえよ!」みたいな、「だから何ってことでもないけどすげー速くたくさん叩けてる!」とか、そして「いま、確実になんらかの核心に限りなく接近している!」っていうこの感じ。文字通り血と汗と涙で人間の生を描いている。めちゃくちゃ暑苦しくて、いい映画だった。