星一

セッションの星一のレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
3.6
 偉大なジャズドラマーに憧れ、アメリカで有名な音楽学校に入学した、主人公、ニーマン。ニーマンは夜、ドラムの自主練習に励んでいると、そこに有名な指導者であり指揮者のフィッチャーが現れる。彼が自主練を見終わると、次の日、ニーマンの元にフィッチャーが現れ、引き抜かれることに。
初日から、彼の恐ろしいほどの、鬼とも言える指導が始まる。彼の指導に耐えながらも、ニーマンも自分の体に鞭を打つ程、取り憑かれたようにドラムにのめり込んでしまう。

 映画フルメタルジャケットのハートマン軍曹の訓練をジャズバンド版にしたようなそんな指導が、映画中ずっと続く。もう、すごい。ここまで来ると、ジャズに狂わされているとしか思えない。主人公もその状況の最中で、よりジャズ、またはドラムにのめり込んで行く。

 これはこういう指導するシーンが苦手だという人にはお勧めできない。明らかに、今の時代にはあっていない指導だと思う。椅子は投げるわ、暴力振るうわ、酷いこと言うわ、もうすごい。映画でもちゃんとフィッチャーは、一応、制裁をくらっている。が、ニーマンに対してちゃんと場を用意して報復しようとしているのが、また、イカれてる。

 ただ、この映画の目的はそういう所ではなく、彼らがジャズの指揮者であり、ドラマーだといいう所にあると思う。ジャズが好きで、偉大なドラマーになりたい。次世代の偉大なプレイヤーを育てたい。それぞれの柱である思いがそこにある。

 このニーマンとフィッチャーは二人とも色んな意味で、明らかに一線を超えた存在であると思う。どんな状況であれ、どんな境地に立たされても、挫折しそうになっても、演奏に向き合い、演奏で勝負する。ニーマンが争い、血気迫るドラムを叩くことで、彼は偉大なドラマーに近付くのかもしれない。そこには、富や名声じゃない、緊張感と迫力が存分にこもったドラムがラストシーンに現れるのだと思う。

 改めて、ジャズという音楽は情熱の音楽だと思わされた。

 そして、好きな物にのめり込んで努力することの大変さが、痛いほど伝わってくる。

 改めて、こういう映画の表現は苦手だという人にはおすすめできないですが、この作品はとても人間くさい、熱い、ジャズ映画です。

 
 
星一

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