このレビューはネタバレを含みます
歪んだ愛も憎悪も、何も正しくないけれどごく稀に刺すような眩い閃光を生み出す。
「偉大になりたい」、「世に名を残したい」というのがいつの間にか「あの人に認められたい」という狭い世界に洗脳されていく。
目を覚まされるように教師が自分の行いを正当化している、自分と同じように偉人に憧れてわざと狂っているだけの虚勢の人間だと突きつけられる。
どうしようもなく泥臭く意地汚く歪んでいても音楽は美しいし、人間の放出する意志を一番反映するのがジャズかもしれないと思わされた。
中盤まで、日常シーンではカメラがガタついてたり陳腐な動きをしていたから脚本が良いので、演奏シーンの演出が良いので成り立っている作品だと思ったけれど、その荒々しさも表現のうちだと気づかされた。
「困難を乗り越え、徐々に認められ成功する」、「支配から解放され、自分らしく歩んでいく」、「再び支配へ戻り、伝統的価値観へ帰る」なんて一通り想像のつくオチなんかではなく何度も何度も、唯一無二の作品だった。
