フカヒレ

セッションのフカヒレのネタバレレビュー・内容・結末

セッション(2014年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

デイミアンチャゼル監督作品。

フレッチャーとニーマンの音楽に対する狂気的な情熱がぶつかり合う、バトルモノといっても過言ではない作品。これまで見た映画のどれとも違う、熱い映画でした。

フレッチャーとニーマンは音楽に対する熱意が異常です。フレッチャーは自分の教え子だった優秀な奏者が死んだことを知り、悲しみ涙を流していました。しかし、その教え子は自殺しており、大元の原因はフレッチャーの異常なまでの指導によるもの。体罰と自覚しながらも、自分の夢である期待以上の奏者を育てることを諦められなかったのでしょう。愛はあれど、終盤のニーマンの知らない曲をぶっつけで弾かせる当たり、できた人間とは思えません。

一方ニーマンは、ライバルの失敗を喜び、恋人を捨て去り、血が迸るほど練習に打ち込んで、退学の原因にもなった演奏会では最後に暴言を吐きながらフレッチャーへ飛びかかっていました。こっちはこっちで、執着心が尋常ではありません。普通は心が折れるところを、ぐいぐいと突き進んでいきます。終盤では、ぶっつけで知らない曲を弾かされるも、弾くことへのこだわりから自ら曲を弾き始め、強引に演奏に運んでいました。できた人間とは思えません。

圧巻のラスト10分、ニーマンの強引な演奏から始まった二人のセッションは、セリフひとつなしにボルテージを上げていき、フレッチャーの聞き取れない声、笑みが映され、満足げな二人の表情のまま終わります。どんなことも乗り越えてくる、狂気をまとったニーマンにフレッチャーの理想が重なりました。最後、禁句であるはずのグッドジョブと言っているように私には聞こえました。結果だけ見れば全くハッピーエンドではないのに、二人の満足した気持ちが伝わってくるようでとても爽快でした。

狂人たちの掛け合いに熱狂しました。迫力とテンポ、人間性が滲み出た映画で、見れてよかったと心から思います。天才たちは常人が踏みとどまるところをなりふり構わず突破していくから、偉業を成し遂げだりカリスマを持ち得るんでしょう。2人の掛け合いを見て心理に全く共感できなくとも、かっこいいと心から思ってしまいました。ニーマンやフレッチャーがあのあとどうなったのか、想像するのも楽しみのひとつですね。最高!
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