タカユキカトー

セッションのタカユキカトーのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
2.5
人が人でなくなる(鬼か神のような何かに近づく)ことで、歴史に残る素晴らしいアート、エンターテイメントが生まれる。
これはひとつの事実だと思う。
過去に実際に起きたことをもとにした普遍的で面白いテーマ。

ただ、そんな様子を描きながらも、それに対して肯定も否定もない。
映画では、描く物語に対しての視点や作者のメッセージが欲しいのだがそれがない。
どう思いますか?というのがメッセージなのかもしれないが、「考えさせられた〜」みたいなポジティブな感じにはならない。

2014年当時としては、こうしたハラスメントの善悪は、答えのない問題だったところもあるかもしれない。
公開から10年が経ち2024年現在では完全に「ハラスメントはやめましょう」という世の中の風潮があるので、余計見辛い。

結果、登場人物の胸糞悪さにばかり目がいってしまった。
最後の演奏シーンも、再び共演して感動するより、音楽的な良さでしか繋がれない虚しさを強く感じた。
その虚しさを超えて熱いものがあると感じさせるには、もうひとつ工夫がいるのではないかと思う。
映像、演技などは素晴らしく、面白いことは面白いだけにとても残念だ。

映画の良し悪しには関係ない個人的なメモ。
歳をとり、「過去の憧れはこうだったから、自分もこうする」というやり方をダサいと感じるようになった。
「過去の偉人はこんなに狂ってたから自分も狂った人生にする」「しかも他人も巻き込む」は特にダメだと思う。

過去の憧れと自身の人生について、「ミッドナイト・イン・パリ」では逆に「過去は過去、自分は自分の別のことをやる」というメッセージがあった。
合わせて観ると勉強にはなる。

でも若い頃に観て影響されて、狂った時間を過ごすのも悪くないかもしれない。