湯っ子

百日紅 Miss HOKUSAIの湯っ子のレビュー・感想・評価

百日紅 Miss HOKUSAI(2014年製作の映画)
3.5
さるすべりを百日紅と書くことは、このタイトルで知った。百日紅の咲く頃である今、この作品を観る。
百日紅の夏から、曼珠沙華の秋、椿の冬に、白木蓮の春。咲く花や、生まれて間もないであろう子犬の成長で、1年間という時間の経過を知らせる描写が良い。

葛飾北斎の娘、お栄をヒロインに繰り広げられる、怪奇や夢幻を散りばめたエピソードたち。
その太い眉毛があらわすように、強い意思を持ち、自由に生きるお栄が見せる優しさが好き。
目のみえない妹お猶のエピソードはどれも心を揺さぶる。特に雪の日のエピソードがあたたかく切ない。

賛否両論あるギターのBGMは、お栄のロックな個性を表現しているのかもしれないけど、ちょっとチープに感じた。エンディングテーマの椎名林檎は良いので、そこで初めてギターが響くほうが鮮やかな印象になったんじゃないかな。

アニメーションも美しいし、作中の絵も素晴らしい。江戸に詳しい人は、その風景や文化を楽しむところにも焦点を合わせて楽しめるのかもしれない。私はもっとエモーショナルなものを求めていたので、その辺が少し物足りなかった。
お栄の春画に色気がないと言われ、男娼のいる遊郭?に行くシーンは、もっと艶っぽくできたはずだと思う。お栄がほのかに恋心を持っているらしい初五郎とのエピソードについても、あっさりしすぎな印象。

私の思う江戸は、もっと猥雑で、その中に粋がちらりと見え隠れするイメージなんだけど、全体的に、ちょっと清潔すぎる気がしたのが残念。
湯っ子

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