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OL日記 濡れた札束のkossのレビュー・感想・評価

OL日記 濡れた札束(1974年製作の映画)
3.8
滋賀銀行9億円横領事件を元にした、男に貢ぎ横領をはたらくオールドミスの銀行員の物語を主軸に、玉音放送から歴代総理の演説、三島由紀夫と戦後史と女の生き方を並置する。

銀行員の女の半生の時間軸を行きつ戻りつしながら、戦争未亡人の姉、アパート大家で生活する老婆、同棲するヒモ男に炊事を任せる友人と女の生き方を対比する。

上司の無理強いの処女喪失から変わって行く女。逃亡中のアパートの窓外から見る楽しそうな女と男。男が買ってくるヒヨコと電球。路面電車の駅で男を待つエプロン姿。割れた箸が鳴る弁当箱。空港の滑走路脇の道で貢いで来た男に捨てられても追いかけて行く女。

山根貞男がロマンポルノに偏在したと言った中島葵の唯一とも言える主演作。中島は美人でなく、強い個性や華はない、だからこそ男と性に溺れていく姿にリアルな凄みがある。

留置所の取り調べに紅をひき、カツ丼を食べる姿が胸に迫る。そしてエピローグの再びの空室ありの貼り紙、橋の坂道を歩くアパート大家の老婆に感涙してしまう。
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