イチロヲ

夕顔夫人のイチロヲのレビュー・感想・評価

夕顔夫人(1976年製作の映画)
4.5
美しい華道家元(谷ナオミ)を密かに慕っている青年(鶴岡修)が、闇組織の拉致監禁行為に加担してしまう。凛とした淑女が奴隷の世界に堕ちていく過程を描いている、日活ロマンポルノ。団鬼六原作。

谷ナオミ演じる「高貴」なヒロインが、狼藉を受けている妹(宮井えりな)の「身代り」となり、「社会的底辺部」に位置する青年との「主従逆転」、あるいは調教師による「凌辱」を受けてしまう。団鬼六作品に共通する要素がすべて盛り込まれている作品。

プロ調教師を熱演するのは、毎度おなじみの高橋明。調教シーンでは、雄大な自然の中での緊縛プレイが白眉となっており、谷ナオミの嬌声が、森林の中を反響する演出に快哉を叫びたくなる(残念ながらアフレコだが)。

谷ナオミを私怨で虐待する渡辺とく子もまた、ささくれだった素晴らしい芝居を見せてくれる。ひねりの効いた鞭の打擲は言わずもがな。逆さ宙吊りの「人間生け花」がシュールで笑える。青年が抱えることになる虚無感が、鑑賞者と合わせ鏡になるところも絶品。
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